土屋広次郎

土屋広次郎は、日本のバリトン歌手として、その豊かな声と表現力で観客を魅了しています。東京都出身で、東京藝術大学音楽学部声楽科を卒業、同大学院修士課程独唱科を修了しました。大学院在籍中には二期会オペラスタジオでオペラの演奏法を深く学び、優秀者賞を受賞。その後、ロータリー財団奨学生としてイタリア・ピアチェンツァへ留学し、元スカラ座コレペティトールのベレンゴに演奏法、発声法を元ソプラノ歌手のアルダ・モルガンに師事しました。アーゾラ音楽祭への出演をはじめ、ミラノ、マントヴァ、ヴェローナ、レヴィコなどイタリア各地でオペラやコンサートに出演し、国際的な舞台経験を積んでいます。

オペラデビューは大学在学中にメノッティ作曲の「電話」で飾りました。特にモーツァルト作曲「フィガロの結婚」のフィガロ役は当たり役として知られ、数多くの公演で主演を務めています。近年では、女流講談師・神田紅による講談オペラなど、新たな演出にも積極的に挑戦しています。2009年にはCD「大切なこと」をリリースしており、その歌声は多くの人々に感動を与えています。

土屋広次郎は、オペラだけでなく、コンサートソリストとしても幅広い活動を展開しています。ベートーヴェンの「第九」や、宗教曲バッハ「マタイ受難曲」、モーツァルト「レクイエム」など、数々の名曲でソリストを務め、その実力を高く評価されています。また、キーロフ歌劇場首席ソプラノ歌手ミルトヴァとのジョイントコンサートなど、国内外の著名なアーティストとも多数共演しています。ソロリサイタルでは、毎年異なるテーマを設定し、多様な音楽世界を表現しています。

クラシック音楽にとどまらず、音楽劇「円仁」では主演を務め、NHKで放送されました。ポップスでは白鳥英美子と共演、ジャズやタンゴにも挑戦し、バイオリン、ベースとのトリオ「リメンブランス」を結成するなど、ジャンルを超えた音楽活動を行っています。

また、土屋広次郎は、両親の出身地である宮崎県をこよなく愛しており、青島神社でのコンサートなど、地域に根ざした活動も積極的に行っています。女優の土屋太鳳、声優の土屋神葉、チアリーダーの土屋炎伽は親族にあたり、神葉は広次郎から声楽の指導を受けたこともあります。

土屋広次郎は、新国立劇場、二期会、東京オペラプロデュース、東京室内歌劇場、日生劇場など、様々なオペラ団体で主要な役を演じてきました。「魔笛」のパパゲーノや弁者、「コシ・ファン・トゥッテ」のアルフォンゾやグリエルモ、「ドン・ジョヴァンニ」のドン・ジョヴァンニやレポレッロ、「椿姫」のジェルモン、「カルメン」のエスカミーリオなど、そのレパートリーは多岐に渡ります。小劇場オペラでも「賢い女」や「奥様女中」などに出演し、幅広い役柄を演じ分けています。また、フェリス女学院大学音楽学部演奏学科声楽の教授として、後進の指導にも力を注いでいます。

土屋広次郎は、その卓越した音楽性と幅広い活動を通じて、日本の音楽界に貢献している、まさに多才なアーティストといえるでしょう。

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