土屋正三

土屋正三は、1893年（明治26年）に静岡県下田市で生まれ、1989年（平成元年）に95歳で亡くなるまで、激動の時代を生き抜いた人物です。彼は、内務省に入省後、地方行政や警察行政の要職を歴任し、戦前は山梨県知事、群馬県知事を務め、戦後は国立国会図書館専門調査員や選挙制度審議会委員として活躍しました。

生い立ちとキャリア

土屋正三は、静岡県立静岡中学校、第一高等学校を経て、1917年（大正6年）に東京帝国大学法科大学法律学科を卒業しました。同年、内務省に入省し、兵庫県属としてキャリアをスタートさせます。その後、兵庫県警視、内務事務官、茨城県書記官・学務部長、内務書記官・警保局図書課長、同警務課長、警察講習所教授などを歴任し、地方行政と警察行政の両分野で幅広い経験を積みました。

県知事としての活躍

1935年（昭和10年）1月、土屋正三は山梨県知事に就任しました。在任中は、産業振興に力を注ぎ、特に、1940年開催予定であった東京オリンピックを見据え、外国人観光客誘致のための国策ホテル「富士ビューホテル」を河口湖畔に建設しました。このホテルは、富士屋ホテルに経営が委託され、地域の観光振興に大きく貢献しました。1937年（昭和12年）7月には、群馬県知事に転任し、戦時下の対策に尽力しました。

戦後の活動

1939年（昭和14年）4月、土屋は農林省農務局長に転任し、1940年（昭和15年）7月まで務めた後、退官しました。その後、日本輸出農産物(株)副社長を務めるなど、実業界でも活躍しました。戦後は、1952年（昭和27年）3月から1960年（昭和35年）8月まで国立国会図書館専門調査員として、また選挙制度審議会委員として、日本の発展に貢献しました。1966年（昭和41年）には、長年の功績が認められ、勲一等瑞宝章を受章しました。

研究者としての側面

土屋正三は、行政官としての活動だけでなく、研究者としても多くの業績を残しました。『出版警察法大要』は、出版警察法に関する重要な研究書であり、『内政史研究資料』は、内務省に関する貴重な談話を収録したものです。また、E.D.グレーパーの『北米合衆国警察行政論』をはじめ、ジョージ・H・ブレイクスリーやモーリス・デュヴェルジェといった海外の研究者の著作を翻訳し、日本の学術界に紹介しました。これらの著作は、当時の日本の行政や法律の研究に大きな影響を与えました。


土屋正三は、地方行政、警察行政、研究、実業界と幅広い分野で活躍し、日本の発展に大きく貢献した人物です。彼の足跡は、日本の近代史を語る上で欠かすことのできない重要な要素です。

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