警察講習所
戦前期日本の警察幹部養成機関：警察講習所とその変遷
警察講習所は、戦前の日本において警察幹部を育成した重要な機関であり、現在の警察大学校に相当します。本稿では、警察講習所の設立以前に存在した「警官練習所」や「警察監獄学校」、そして警察講習所の後身である「中央警察学校」と「地方警察学校」についても、その歴史的背景と役割を詳細に解説します。
警官練習所：近代警察制度の確立を目指して
1885年（明治18年）、内務卿であった山縣有朋の建議により、赤坂区葵町に「警官練習所」が開校しました。当時の日本は、条約改正が急務であり、近代的な警察制度の確立が強く求められていました。警官練習所は、ドイツの警察制度を模範とし、ドイツからウィルヘルム・ヘーンを招聘して講義を行わせるなど、幹部育成に力を注ぎました。井土霊山や後藤新平も教官として勤務しましたが、1889年（明治22年）に財政上の理由から廃止されました。短い期間でしたが、552名の卒業生を輩出しました。
警察監獄学校：領事裁判権撤廃後の警察事務の複雑化に対応
1899年（明治32年）には「警察監獄学校」が開校しました。この年に条約改正が実現し、領事裁判権が撤廃され、外国人の内地雑居が認められたことで、警察事務の複雑化が予想されました。当時の内務省は矯正事務も所管していたため、刑務官も警察官と共に教育を受けました。1900年（明治33年）に矯正事務が司法省に移管された後も、刑務官の入校は継続されました。学校は東京地方裁判所前に移転しましたが、1904年（明治37年）に日露戦争による財政悪化のため廃止されました。在籍期間中、1068名の卒業生を送り出しました。
警察官練習所：警察協会の附属学校として幹部教育の必要性を担う
1909年（明治42年）には、警察協会附属の学校として「警察官練習所」が開校しました。当時は幹部教育の必要性が強く認識されていましたが、財政難のため国費による学校設立が困難でした。そのため、警察官の私設団体である警察協会が運営する学校という形態がとられました。1918年（大正7年）に国立の「警察講習所」が開校するまでの約10年間で、1664名の卒業生を輩出しました。
警察講習所：幹部教育の中核機関へ
1918年（大正7年）、旧警察官練習所を継承する形で「警察講習所」が開校しました。関東大震災で校舎が焼失しましたが、1927年（昭和2年）に再建されました。警察官や消防官の幹部教育を主な任務とし、国内の警察官だけでなく、満州国や中華民国の警察官も留学させて教育を行いました。1936年（昭和11年）には全寮制が導入され、教育体制が強化されました。1946年（昭和21年）に「中央警察学校」と改称されるまでの間、各科合計で1万人以上の卒業生を送り出しました。
中央警察学校・地方警察学校：戦後の警察制度改革
1946年（昭和21年）、「警察講習所」は「中央警察学校」に改称され、主に警部や警部補といった幹部に対する教育が行われました。1948年（昭和23年）の旧警察法施行に伴い、「警察大学校」へとさらに改称されました。また、地方においては巡査部長など中堅幹部を育成するため、「地方警察学校」が新たに設けられました。こちらも1948年（昭和23年）の旧警察法施行に伴い、「管区警察学校」と改称されました。
警察講習所とその前身・後身機関は、日本の警察制度の発展において重要な役割を果たしました。各学校は、時代の変化に対応しながら、警察官の育成と警察組織の強化に貢献してきたといえるでしょう。
参考文献
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