土岐實光

土岐實光（とき さねみつ）は、1922年6月30日に生まれ、2011年4月13日に88歳で亡くなった、日本の著名な鉄道技術者です。

東京工業大学工学部機械工学科を卒業後、日本国有鉄道（国鉄）に入社し、設計技師長としてその才能を発揮しました。彼の最も著名な業績の一つは、DD51形ディーゼル機関車の主任設計技師を務めたことです。DD51形は、1962年から製造され、最終的に649両が製造されるほどの成功を収めました。その設計における彼のリーダーシップは、日本の鉄道史に深く刻まれています。

その後、土岐氏は東急車輛製造に移籍し、アメリカ合衆国のバッド社との技術提携を通じて、オールステンレス鉄道車両の国産化に尽力しました。当時、ステンレス車両は最新技術の粋を集めたものであり、その国産化は日本の鉄道技術の発展に大きく貢献しました。彼は同社で専務取締役まで昇進し、その手腕を発揮しました。

特筆すべきは、国鉄がオールステンレス車両を導入するにあたり、東急車輛製造の技術を無償で公開したことです。この決断は、オールステンレス車両の普及を加速させ、鉄道車両の品質向上に大きく貢献しました。この功績から、彼は社内で「ミスターステンレス」と呼ばれるようになり、その技術者としての卓越性と社会貢献が広く認められました。

土岐氏は、単なる技術者であるだけでなく、華麗なる家系の出身でもありました。子爵土岐章の長男として生まれ、上州沼田藩主土岐家の直系（第18代当主）であり、血統上は松平定信の男系子孫にあたります。彼は関東土岐会の名誉会長も務め、その家系の重要性を示していました。夫人は元陸軍大将木村兵太郎の長女・百合子。

2011年4月13日、土岐實光は進行性神経麻痺のため88歳で生涯を閉じました。彼の死は、日本の鉄道技術界にとって大きな損失であり、その功績は長く語り継がれることでしょう。

著書として、鉄道ファン連載の「ある車両技術者の回想」をまとめた『電車を創る』（1994年、交友社刊）があります。これは、彼の技術者としての経験や思いを綴った貴重な記録であり、鉄道ファンにとっては必読の書と言えるでしょう。

参考文献：霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成』下巻、霞会館、1996年。

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