土師政雄

土師政雄（はじ まさお）：多才な活動家の生涯

土師政雄（1925年9月27日 - 1998年6月9日）は、日本の政治運動家、予備校講師（数学）、評論家として知られています。東京大学工学部を卒業後、小田実、吉川勇一らと共に「ベトナムに平和を!市民連合」（ベ平連）で活動し、平和運動に尽力しました。また、教育者としては、水道方式を巡る算数・数学教育の分野で独自の評論を展開し、活動家としてもその名を知られました。

予備校講師としての輝かしい経歴

土師政雄は、代々木ゼミナール、河合塾、駿台予備学校という、当時の三大予備校全てで教鞭を執った稀有な経歴の持ち主です。Z会の数学主任としても受験指導に携わり、多くの受験生を志望校合格へと導きました。長年にわたり代ゼミで「ベーシック数学ゼミ」を担当し、旺文社の「大学受験ラジオ講座」の講師も務めるなど、教育者として多岐にわたる活動を展開しました。

参考書執筆にも力を注ぎ、旺文社の『基礎問題精講』『標準問題精講』シリーズ、増進会出版社の『トレーニング』シリーズ、アレフ社の『微積分演習』『代数幾何演習』『行列』『積分』『整数』など、数多くの受験参考書を執筆しました。これらの参考書は、受験生にとって必須のアイテムとなり、多くの学生の学力向上に貢献しました。

若者への熱い想いと教育への警鐘

土師政雄は、現代の学校教育に強い疑問を抱いていました。受験戦争を勝ち抜くためだけに良い点を取る方法を追い求める若者たちを見て、学ぶこと、知識を得ることの本質を見失っていると嘆いていました。彼は、受験テクニックだけでなく、学ぶことの楽しさや知識の重要性を伝えることを大切にしていました。

世田谷にあった自宅の離れを若者たちに開放し、「微積分の会」や「脱・学校の会」などを主催しました。権威を笠に着ない気さくで優しい人柄で多くの若者から慕われ、年齢に関係なく誰とでも親しく話しました。悩みを抱える若者や居場所のない若者の相談にも親身に乗り、彼らの心の支えとなりました。土師を慕い、自宅の傍にアパートを借りて頻繁に訪れる若者もいたほどです。

当時まだ普及していなかったパソコン（PC-9801やMacintoshなど）やコピー機などを無償で提供し、若者たちの会報発行などを支援しました。彼は、若者たちが自由に学び、交流できる場を提供することで、彼らの成長を後押ししました。

その死と墓所

1998年、土師政雄は永眠しました。彼の墓は、東京・港区の青山墓地内にあります。

著作

評論家としては、『反「数学教育」論』や『高校無用の大学進学法』などの著作があります。これらの著作を通して、彼は教育に対する独自の視点を提示し、多くの読者に影響を与えました。

『反「数学教育」論』（アレフ社、ISBN 4-7524-1012-5）
『高校無用の大学進学法』

人となり

旧制一高（現・東大教養学部）を卒業したエリートでありながら、その経歴を就職などに利用したことがないと自慢していました。愛妻家としても知られ、病弱な夫人を大切にしていました。若い頃に結核を患った影響で、時折しわがれ声や咳をすることがありました。

土師政雄は、教育者、活動家、そして人間として、多くの人々に影響を与えた人物でした。彼の残した功績は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

外部リンク

追悼文集『土師政雄さんをめぐる44の断章』より（吉川勇一）
「土師政雄さんを偲ぶ会」盛会。著書の復刻版も（99/07/05）

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