ベトナムに平和を!市民連合

ベトナムに平和を！市民連合（ベ平連）：激動の反戦運動史

1965年、アメリカ軍による北ベトナム爆撃開始を受け、著名な知識人や文化人らによって結成された「ベトナムに平和を！市民連合（ベ平連）」は、日本の反戦運動史において特異な存在感を示しました。明確な規約や会員制を持たない、ゆるやかな市民連合という形態は、多様な人々の参加を呼び込み、運動の規模と影響力を拡大する一方、内部分裂や様々な論争も引き起こしました。

結成と初期の活動

ベ平連のルーツは、安保改定反対運動に遡ります。鶴見俊輔、高畠通敏、小田実といった知識人たちは、「声なき声の会」という市民運動を母体として、反戦運動を展開。北爆開始を契機に、1965年4月24日、大規模な反戦デモを行い、ベ平連は正式に発足しました。

初期のベ平連は、「来る者は拒まず、去る者は追わず」をモットーに、左翼系市民団体から右翼団体にまで至る、幅広い層の参加を受け入れました。デモ行進やアメリカ合衆国への抗議活動に加え、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』といった海外有力紙への反戦広告掲載など、革新的な活動も展開。その活動規模は、既存の反戦運動の枠を超え、多くの注目を集めました。

脱走兵支援とソ連との関係

ベ平連は、アメリカ軍の脱走兵支援活動にも深く関わりました。「JATEC（Japan Technical Committee to Aid Anti War GIs）」と名付けられた組織は、違法な手段も用いて、脱走兵の国外脱出を支援。この活動は、ソ連国家保安委員会（KGB）からの資金援助を受けていたと、ソ連崩壊後に公開された機密文書によって明らかになりました。

公開された文書によると、KGBはベ平連との秘密裏の接触を維持し、反米プロパガンダ活動の拡大、脱走兵支援などの活動に資金援助を行っていました。ベ平連側の要請に応じ、少数の脱走兵を日本からスウェーデンなどへ送る支援を行ったとされています。しかし、スパイの潜入や、KGB側の対応の変化などもあって、協力関係は次第に終焉を迎えます。ソ連からの資金援助の事実が明らかになったことは、ベ平連の活動に対する批判を招き、運動内部にも亀裂を生む要因となりました。

その他の活動と解散

脱走兵支援以外にも、ベ平連は様々な活動を行いました。例えば、三菱重工などの防衛産業や、ベトナムに進出する企業に対する「一株株主運動」は、その活動の代表例です。株主総会に多数の参加者を送って抗議活動を行い、企業のベトナム進出に反対しました。

1973年1月、パリ協定調印によるベトナム戦争終結を受け、ベ平連は1974年1月に解散しました。反戦運動の終焉に加え、メンバー間の思想的対立も解散の要因となりました。

ベ平連の意義と影響

ベ平連は、その活動を通して、ベトナム戦争への反対を訴えるだけでなく、様々な社会問題への関与や、国際的な連帯の構築にも貢献しました。ソ連からの資金援助疑惑は、ベ平連の活動に対する複雑な評価を促す要因ではありましたが、反戦運動史におけるその存在は、無視できないものです。 ベ平連の活動は、戦後日本の市民運動、特に反戦運動、そして左翼運動全体に大きな影響を与え、その歴史的意義は、様々な視点から評価され続けています。多様な参加者、多様な活動、そしてその終焉に至る過程は、現代社会においても様々な示唆を与えてくれるでしょう。

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