土生玄碩

土生 玄碩（はぶ げんせき）

土生玄碩は、1762年に江戸時代後期の安芸国高田郡吉田村で生まれました。彼の家系は代々眼科を専門としており、父・義辰も医家でした。若い頃の玄碩は、17歳で眼科の知識を求めて旅に出る決心をしましたが、当時の眼科医は秘教的で、長男にのみ知識を伝えることで知られていました。彼は最終的に京に行き、漢方医のもとで学びました。

京での修行中、彼は非合法な腑分けの折、眼球の解剖を自ら手がけました。これは日本の眼科医学において初めての試みであり、彼の探究心や革新性の一端を示しています。修行後、一度帰郷しましたが、漢方眼科に満足できず、再び大坂に出て新たな知識を吸収し、開業しました。ここで白内障の手術を習得し、未だ広まっていなかった穿瞳術も発明しました。

享和3年（1803年）、彼は広島藩の藩医に任命されます。その後、文化5年（1808年）、広島藩第7代藩主の娘が眼病に侵された際、玄碩の巧妙な治療法によって彼女は全快し、これが彼の名声を高めるきっかけとなりました。この成功を踏まえ、彼は江戸に移り、さらに杉田玄白のもとで研鑽を続けました。

彼は文化6年（1809年）、将軍に招かれ、幕府の奥医師に就任しました。この役職により彼は多大な名声と財を手に入れ、大名や武士たちにも金銭の貸し付けを行うようになりました。文政5年（1822年）には、オランダのシーボルトから白内障手術に必要な瞳孔散大薬の存在を聞き、実際に試みることになります。

玄碩はシーボルトから分与された薬を使い、成功を収めましたが、その植物は実際にはベラドンナではなく別の植物であるハシリドコロであったと後に判明します。このことで彼は日本の眼科の父とも称されるようになりました。しかし、彼がシーボルトに贈った葵の紋付が国禁を侵していたため、晩年には官位を失い、獄に服することになりました。

釈放された後、彼は再度眼科を開業し、息子の玄昌とともに成功を収めました。87歳で亡くなるまでに彼が築いた医師としての名声は非常に高く、著書も残しています。彼の功績は今でも評価されています。

土生玄碩の人生は波乱に満ち、彼の教育、実践、そして医術への貢献は後世に大きな影響を与えました。彼の墓は東京都に現存し、その存在は多くの人々に語り継がれています。江戸時代の医療の発展において彼は一人の重要な人物であったと言えるでしょう。

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