在日米軍裁判権放棄密約事件

在日米軍裁判権放棄密約事件について

在日米軍裁判権放棄密約事件は、1953年に日本とアメリカの合同委員会で成立した合意を指します。この合意では、日本政府が在日米軍の将兵や軍属に対して、重要な案件を除き裁判権を放棄することが取り決められました。この情報は、アメリカの公文書が公開されたことで明らかになりました。

概要

過去において、日本政府と在日米軍との間には、裁判権に関する秘密の合意が存在することが指摘されていました。しかし、この密約が具体的に確認されたのは2008年で、国際問題研究家の新原昭治がアメリカの公文書からこの情報を発見したことがきっかけとされています。これにより、在日米軍の関与する事件の多くが日本側の裁判権を放棄されたことが明るみに出ました。

事件の経緯

新原の調査では、1953年に日本政府は米軍関与の刑事事件について、特に重要でない案件や日本有事に際しては、日本が裁判権を放棄することが合意されたとされています。この合意は、『行政協定第一七条を改正する一九五三年九月二十九日の議定書』に関連しています。この時、アメリカ側の代表はアラン・トッド中佐、日本側は津田實・法務省総務課長でした。

密約が発効した後の5年間で発生した約13000件の事件の97%に対して日本側は裁判権を放棄し、実際に裁判が行われたのは約400件のみでした。法務省は全国の地方検察庁に対し、実質的に重要な事件以外は裁判権を行使しないよう指示していたことも、密約の証拠とされています。このことは、日本の法務省が裁判権不行使の自主規制に関与していたことの表れとも言えます。

密約の影響と政治的動き

1958年、アメリカ合衆国の国務長官であるジョン・フォスター・ダレスが新日米安保条約および日米地位協定の締結時に、裁判権の放棄を公に認めさせようと試みましたが、日本側は国内批判を懸念して拒否したとされています。また、1974年に沖縄で発生した米兵の発砲事件をきっかけに、再び裁判権の問題が浮上しました。米国側は日本の裁判権を行使するよう要求し、日本側がこれに反発したことも特筆すべき点です。

現在の状況

2008年には新党大地の鈴木宗男が密約に関する質問主意書を提出しましたが、政府はその存在を否定しました。さらに、国立国会図書館では密約に関する重要な資料が閲覧禁止にされ、その理由として他国との信頼関係や捜査への影響が挙げられました。その後、文書の存在が確認されたことにより、密約の認知が広がることとなりました。

2010年には鳩山由紀夫内閣が密約文書調査機関を設置し、アメリカ側が管理していた合意の記録が公開されるなど、密約にまつわる情報が徐々に明らかになっています。この事件は、日本の外交政策や日米関係の歴史を理解する上で非常に重要な位置を占めています。

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