在独ソ連軍政府

在独ソ連軍政府（SMAD）とは

在独ソ連軍政府（SMAD）は、第二次世界大戦終結後、1945年6月から1949年 11月11日まで、ソ連が占領したドイツ地域における最高司令部として機能した事実上の政府機関です。ドイツ語では「Sowjetische Militäradministration in Deutschland」、ロシア語では「Советская военная администрация в Германии」と表記されます。

SMADの成立と背景

SMADの公式な地位は、1945年 6月9日の在独ソ連軍最高司令官命令第1号によって定められました。その起源は、1944年9月12日のロンドン会議に遡り、米・英・ソ三国によるドイツの占領統治が決定されたことに始まります。ヤルタ会談では、フランスを加えた4カ国による分割占領が合意されました。

各国は、大戦末期の占領開始時からそれぞれの占領地域で独自の統治を敷き、SMADはソビエト連邦人民委員会議とヨシフ・スターリンの直接的な支配下に置かれました。

SMADの組織と機能

SMADの組織構成は、ソ連占領地域の行政機構に対応しており、ベルリン・カールスホルストの中央局を中心に、メクレンブルク・フォアポンメルン、ブランデンブルク、ザクセン＝アンハルト、テューリンゲン、ザクセンなどの地方にも施設が配置され、司令部のネットワークが構築されました。

特務専門局は、ドイツの様々な行政機関の活動を監視する役割を担っていました。SMADのトップである最高司令官には、ゲオルギー・ジューコフ、ワシーリー・ソコロフスキー、ワシーリー・チュイコフが歴任し、彼らは同時にドイツ駐留ソ連軍の最高司令官でもありました。

SMADは、1945年から1949年までの間に、ドイツの行政に対して多数の命令を文書で発令しましたが、口頭での指示やコメントなど、非公式なレベルでの影響力も行使していました。

SMADの限界と矛盾

SMADは大きな潜在能力を持っていましたが、その管轄範囲はスターリンの支配システム内部に限定されていました。様々なソ連の行政機関に属し、それぞれの機関が矛盾する構想を持っていたため、セルゲイ・イヴァノヴィッチ・テュルパノフやヴラディーミル・セミョーノフのような職員は、ソ連の国家機関や共産党に対して特別な関係を持っていました。

ソ連軍政府とソ連内務省（NKWD）などの機関は、しばしばばらばらに業務を行い、それぞれの関係性は矛盾していました。一方で、占領軍将校は、ドイツ当局との交渉で脅威を利用し、SMAD職員はソ連諜報機関の違法行為を非難していました。

復興政策とナチズムの克服

SMADは、他の連合国と同様に、自国の条件に基づいてドイツの復興を行おうとしました。大量の逮捕や公職追放はSMAD政権の結果ではありませんでしたが、SMADは自国の利益に合うように状況を利用し、一般的な「ドイツ」の処罰に積極的な態度を示す将校もいました。ナチズムと戦争犯罪の処罰を超えた訴追が過剰に行われていることを批判しました。

SMADの解散とその後

1949年 10月10日、SMADは解散し、軍政による占領統治は終了しました。その後、ソ連管理委員会（SKK）が設置され、民政による占領統治が開始されました。SMAD最高司令官であったチュイコフがSKKの委員長に就任し、その解散まで務めました。

占領法下の立法

1945年7月初め、SMADはドイツの地方行政機関を設置しました。法的根拠として、連合国管理理事会またはソ連軍政府の法律や命令に反しない場合に、立法・司法・行政の領域で法律や命令を公布できると定められました。ドイツ行政府の自主性は公式には認められていましたが、実際には限定的でした。地方議会に立法権が移譲された後も、ソ連当局が指示する方針は残り、ソ連軍政府は政治的統制を行使しました。

ドイツ中央局（DZVs）の設立

SMADは、1945年 7月27日の命令第17号によって、「経済の発展と交通・報道制度の復興、福祉厚生および国民教育制度の再建のため」、ドイツ中央局（DZVs）を設立しました。中央局はSMADを補助し、ドイツに社会主義国家を建設する土台を築きました。司法中央局など、一部の中央局は1949年の東ドイツ建国時に解体され、各省庁に移管されました。1945年秋までに、交通、報道、エネルギー、商業、工業、農業、金融、労働・社会福祉、保険、教育、司法を管轄する11の中央局が設置され、1947年半ばまでに、移民局、統計局、強制執行・差押に関する中央委員会、内務中央局、東西国境地帯および外国貿易局が追加されました。

SMADの遺産

SMADは、戦後ドイツのソ連占領地域における政治、経済、社会の再建に大きな影響を与えました。その活動は、後の東ドイツの成立と発展に深く関わっており、冷戦時代を通じて東西ドイツの関係にも影響を与え続けました。

もう一度検索