地
サイダーとは、日本各地において主に中小・零細企業が独自に製造・販売する
サイダー類を指します。その名称は、地域の個性を打ち出した「
地酒」や「地ビール」といった言葉に影響を受けたもので、全国規模で広く流通している製品と区別するために、「ご当地」や「地域」、「地元」といった意味合いを込めて「地
サイダー」や「ご当地
サイダー」と呼ばれています。
現在の地
サイダーは、大きく二つのタイプに分類できます。
1. 伝統的な地域限定タイプ
一つは、かつてから物流などの理由で、その地域だけで販売されてきた種類です。主な特徴として、
生産量が少ないことや、昔ながらの
瓶を回収する必要があることから、原則として地元でのみ販売されています。
長年その土地で事業を営む業者が生産を担っています。
地元ならではの美味しい水や、地域の特産品などが原料として使われています。
昭和初期から中期にかけて出荷されていた三ツ矢
サイダーの古い
瓶を再利用している例が多く見られます。(なお、現在
アサヒ飲料が全国で販売する三ツ矢
サイダー自体は地
サイダーではありません。)
このタイプの地
サイダーは、後継者不足や、リサイクル
瓶の確保が難しくなったといった理由から、残念ながら製造が続けられなくなるケースも少なくありません。しかし、その希少性や、古き良き時代を懐かしむレトロブーム、あるいは地域活性化の一環として、改めて注目されることもあります。
2. 近年登場した町おこし・ブーム牽引タイプ
もう一つは、地域活性化や話題作り、あるいは特定のテーマ(希少性、懐古趣味など)を目的に、比較的近年になって登場した種類です。主な特徴は以下の通りです。
「地域限定」であることを謳い、基本的には地元で販売されますが、インターネット販売などを通じて全国から入手できる場合も増えています。
地元の業者が生産するパターンもありますが、地域の外にある製造業者に
OEM生産(相手先ブランド製造)や生産委託をして販売されるパターンが多く見られます。
伝統的なタイプと同様に、地元の名水や、地域の特産品(果物、野菜、塩など)を原料として使用しています。
かつてその地域で愛されていたものの製造が途絶えてしまった商品を、現代に復刻させたものも多く含まれます。
多くの場合、手軽なペットボトルや、昔ながらの栓抜きを使うラムネ
瓶が使われています。
近年の「地
サイダー」ブームを牽引しているのは、このタイプの製品が多い傾向にあります。
地域に根付く文化
地
サイダーは単なる飲み物にとどまらず、地域の文化と深く結びついています。総務省が実施した平成21年〜23年の家計調査によれば、一世帯あたりの炭酸飲料への支出額は、青森市、札幌市、山形市、盛岡市、前橋市といった北日本の都市が上位を占めています。これらの上位の県には、古くから地
サイダー文化が根付いている様子がうかがえ、地域の人々に親しまれてきた歴史があることが示唆されます。
多様な地域の顔ぶれ
全国各地には、数多くの地
サイダーが存在します。例えば、青森県には古くから愛される「朝日
サイダー」や、地元の果物を使った「津軽さくら
サイダー」などがあります。秋田県の「仁手古
サイダー」は、100年以上の歴史を持つ
湧水を利用した伝統的な味わいです。宮城県
石巻市の「金華
サイダー」や福島県
会津若松市の「磐梯
サイダー」のように、かつて製造されていた商品を現代に復刻させたものも多く、歴史を飲むような感覚を味わえます。
また、静岡県の木村飲料のように、地元の名物やユニークなテーマ(だるま、富士山など)を冠した多様な
サイダーを製造するメーカーもあれば、佐賀県の友桝飲料のように、他地域の地
サイダーの製造を数多く請け負い、地域ごとの特色を生かした製品づくりを支えている企業もあります。温泉地では、その地の名を冠した「湯あがり堂」シリーズのように、温泉水を使用したり、温泉地での消費を意識した商品も生まれています。
これらの地
サイダーは、地域の特産品(北海道のハスカップ、山形の塩、茨城のゆず、石川の柚子や塩、愛知の抹茶、三重の真珠塩など)を使用したり、地元の名所やキャラクターをラベルデザインに取り入れたりするなど、それぞれの地域の個性を強く打ち出しています。廃業により姿を消した「こまどり
サイダー」(静岡)や「三菱
サイダー」(熊本)のように、地域の記憶に刻まれた製品もあります。
地
サイダーは、地域の水と素材、そして人々の営みが生み出した、地域ならではの味わいです。旅先で偶然出会ったり、インターネットで取り寄せて味わったりすることで、その土地の風土や歴史に触れることができる、まさに「飲む旅」ともいえる存在と言えるでしょう。
参考文献・関連項目
レトロモダン飲料愛好会『地
サイダー読本』春日出版
ラムネ
日本国内地域限定の清涼飲料
ガラナ
リボンナポリン
外部サイト
全清飲|のみもの情報館
全国ご当地
サイダー特集|Actiz