地上発射巡航ミサイル (アメリカ軍)

地上発射巡航ミサイル（GLCM）

地上発射巡航ミサイル（GLCM）は、北大西洋条約機構において冷戦後期に配備されていた核攻撃用のミサイルシステムです。このミサイルはアメリカ陸軍によって開発されたトマホーク巡航ミサイルの地上発射型であり、愛称「グリフォン（Gryphon）」で知られています。

開発背景と概要

GLCMは、ソビエト連邦のSS-20中距離弾道ミサイルに対抗するために設計されました。アメリカの長距離核戦力を強化する一環として開発が進められ、最終的に322基のミサイルと95基の発射機が配備されることとなりました。ミサイルの型式番号はBGM-109Gで、移動式の地上発射設備によって運用されます。

このミサイルは、4連装の発射筒を備えたトレーラーから発射され、全て核弾頭を搭載しています。搭載される弾頭はW84であり、ロケットブースターによって打ち上げられた後、ターボファンエンジンを用いて、TERCOM（Terrain Compare Navigation）誘導を活用しながら低高度を巡航します。GLCMは亜音速飛行が可能で、射程は約2,500kmに達します。この射程は、同時期に配備されていたパーシングII弾道ミサイルの約1,770kmを上回っています。

配備と廃棄

1977年からアメリカ空軍による地上発射システムの開発が始まり、1983年からはヨーロッパへの配備がスタートしました。この配備は、NATOの二重決定方針に基づくもので、冷戦時代の核戦力近代化を目的としていました。特に西ヨーロッパでは、核戦力の増強に対する平和運動が広がり、社会的な議論を引き起こしました。

しかし、1988年に中距離核戦力全廃条約が締結されると、GLCMは廃止対象となり、1991年にはほとんどのミサイルが廃棄されました。ただし、博物館展示用に8基が残されました。

配備されていた部隊

GLCMは主に以下の部隊によって運用されていました：

• - 第38戦術ミサイル航空団（西ドイツ）
• - 第303戦術ミサイル航空団（イギリス）
• - 第485戦術ミサイル航空団（ベルギー）
• - 第486戦術ミサイル航空団（オランダ）※実弾配備は行われず
• - 第487戦術ミサイル航空団（イタリア）
• - 第501戦術ミサイル航空団（イギリス）
• - 第868戦術ミサイル訓練隊（アメリカ合衆国アリゾナ州）

GLCMは、冷戦期における戦略的なミサイル体系の一部であり、当時の国際情勢に大きな影響を及ぼした重要な兵器でした。

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