地中海連合

地中海連合：構想から発足まで、そしてその波乱の歴史

2008年7月13日、フランス大統領ニコラ・サルコジの提唱によって地中海連合（Union pour la Méditerranée）が発足しました。EU加盟国と地中海沿岸諸国の42カ国からなる政府間組織として、経済、政治、文化的な統合を目指したこの構想は、当初から多くの困難に直面することとなります。

構想の誕生と初期の展望

地中海連合構想は、サルコジ大統領選挙中に生まれた構想です。サルコジ大統領は、トルコのEU加盟に反対する一方で、トルコを含む新たな地域統合を構想していました。地中海連合は、この構想の縮小版として提案されましたが、トルコはEU加盟の代替案とみなされることを懸念しました。最終的に、EU加盟の代替案ではないという保証を得た上で、トルコは地中海連合に参加を決定しました。

サルコジ大統領は、地中海連合がイスラエルと周辺アラブ諸国間の和平促進に役割を果たすと期待していました。また、EU理事会をモデルとした常設理事会の設置、エネルギー・安全保障分野での協力、司法分野での連携なども構想されていました。フランスの原子力技術の提供と天然ガスの入手なども視野に入れていたようです。

批判と構想の縮小

しかし、この構想は当初から批判にさらされました。既存の欧州・地中海パートナーシップ（バルセロナ・プロセス）との関係、EUの地中海政策との競合、EUの警察・刑事司法協力との重複などが問題視されたのです。

特にEU域内、特にドイツからの反対は強く、EUの資金使用に関する懸念や、EUの一部の加盟国のみが参加するという点への批判が噴出しました。これを受け、サルコジ大統領は構想の規模を縮小せざるを得ませんでした。最終的には、既存のバルセロナ・プロセスをベースとし、全てのEU加盟国が参加する形で地中海連合は発足することとなります。

参加国と目的

地中海連合はEUよりも緩やかな連合体です。全てのEU加盟国と地中海沿岸諸国が参加し、「架け橋」を築くという目的がありました。当初はEU加盟国の中でも地中海に面する国々のみの参加を予定していましたが、ドイツなどの反対により、全てのEU加盟国が参加することになりました。

地中海連合の目的は、経済協力、安全保障、テロ対策、移民問題への対応など多岐に渡りますが、その具体的な活動内容や効果は、発足後も議論が続いています。

国際社会の反応

地中海連合構想に対して、国際社会の反応は様々でした。

アラブ連盟: アラブ連盟内でも賛否両論がありました。一部の国は支持を表明しましたが、リビアはフランスの覇権主義を懸念するなど、批判的な意見も存在しました。

欧州連合: スペイン、イタリア、ギリシャなどは支持しましたが、ドイツや欧州委員会は警戒感を示し、既存のバルセロナ・プロセスとの整合性を懸念しました。

マルタ: サルコジ大統領が当初、マルタを参加国リストから漏らしたことで、マルタ政府の反感を買い、謝罪に追い込まれる事態となりました。

地中海東岸諸国: イスラエルは前向きに捉えていましたが、トルコは当初、EU加盟の代替案とみなされることを懸念していました。

結論

地中海連合は、サルコジ大統領の積極的な推進にもかかわらず、構想の縮小、EUや周辺諸国からの反発など、数々の困難を経験しながら発足しました。その後の活動状況や影響については、さらなる検証が必要でしょう。当初の野心的な構想からは程遠い現状ではありますが、地中海地域における協力体制構築への試みとして、その歴史的意義は無視できません。

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