地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律

地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律（歴史まちづくり法）について

「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」（以下、歴史まちづくり法）は、平成20年5月23日に公布され、同年11月4日に施行された日本の法律です。この法律は、各地域が持つ固有の歴史や伝統を反映した建造物や街並み、さらには人々の活動によって形成されてきた良好な環境、すなわち「歴史的風致」を維持し、向上させることを目的としています。

法律の背景

これまでにも文化財保護法、景観法、古都保存法といった関連法規が存在しましたが、これらは文化財そのものの保護や土地利用の規制に重点が置かれており、歴史的な建造物の復原や、周辺環境の整備には十分に対応できない側面がありました。そこで、地域の歴史や文化をより積極的に保護・活用し、後世に継承していくために、歴史まちづくり法が制定されました。

歴史的風致の定義

歴史まちづくり法第1条では、「歴史的風致」を「地域におけるその固有の歴史及び伝統を反映した人々の活動とその活動が行われる歴史上価値の高い建造物及びその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境」と定義しています。つまり、単に古い建物が残っているだけでなく、その場所で営まれてきた人々の生活や文化、歴史的な背景を含めた総合的な環境を指しています。

法律の概要

歴史まちづくり法は、市町村が作成する「歴史的風致維持向上計画」に基づき、歴史的風致を後世に継承するまちづくりを国が支援する仕組みを構築しています。文部科学省（文化庁）、農林水産省、国土交通省が共管しており、計画が国に認定された市町村は、国の財政支援や特別な措置を受けることができます。

法律の構成

歴史まちづくり法は、以下の章で構成されています。

第1章：総則（目的、定義など）
第2章：歴史的風致維持向上基本方針
第3章：歴史的風致維持向上計画の認定等
第4章：認定歴史的風致維持向上計画に基づく特別の措置
第1節：歴史的風致形成建造物
第2節：歴史的風致維持向上施設の整備等に関する特例
第5章：歴史的風致維持向上地区計画
第6章：歴史的風致維持向上支援法人
第7章：雑則
第8章：罰則
附則

法律の内容

歴史的風致形成建造物の指定と規制:
市町村は、地域の歴史的風致を形成する上で重要な建造物を「歴史的風致形成建造物」に指定できます。
指定された建造物の増改築、移転、除却を行う際には、事前に市町村長への届出が必要です。
市町村長は、必要に応じて、建造物の保全のための措置を勧告することができます。
また、市町村は、所有者の申し出に応じて、買取りや賃貸借のあっせん、自ら買取る等の措置を講じることができます。
歴史的風致維持向上地区計画:
市町村は、特に歴史的風致の維持・向上が必要な区域を「歴史的風致維持向上地区」として指定し、整備計画を定めることができます。
地区計画区域内での土地の形質の変更、建築物の新築・増改築等には、事前に市町村長への届出が必要です。
市町村長は、届け出られた行為が地区計画に適合しないと判断した場合、必要な措置を勧告することができます。
宅地建物取引業者の重要事項説明:
宅地建物取引業者は、歴史的風致形成建造物の売買や、歴史的風致維持向上地区計画区域内の宅地建物の売買を行う際、買主に対し、市町村長への届出が必要であることを説明する義務があります。

歴史的風致維持向上計画の認定状況

2021年3月23日現在、84の市町で歴史的風致維持向上計画が国に認定されています。

まとめ

歴史まちづくり法は、地域の歴史や文化を守り、活性化させるための重要な法律です。この法律を適切に活用することで、各地域の個性豊かな街並みや文化を後世に引き継ぎ、魅力的な地域づくりを進めていくことが期待されます。

関連情報

「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」について（文化庁）
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