地域科学部

地域科学部（ちいきかがくぶ）

地域科学部とは、地域が直面する様々な課題に対し、人文科学、社会科学、自然科学といった既存の学問分野の枠にとらわれず、文系・理系の両面から学際的かつ総合的にアプローチし、より良い地域社会の創造を目指すことを目的とした大学の学部です。

地域社会が抱える問題は、単一の専門分野だけで解決できるほど単純ではありません。例えば、過疎化は経済的な問題であると同時に、社会構造やコミュニティのあり方、さらには個人の心理や文化的な側面とも深く関連しています。環境問題は科学技術や生態系の理解が必要な一方で、人々の行動様式や政策、経済活動とも密接に関わります。このように複雑に絡み合った地域課題に対して、地域科学部では、人文科学の視点から地域の歴史や文化、人々の価値観を理解し、社会科学の手法を用いて社会構造や制度、経済の動きを分析し、さらに自然科学の知識を応用して自然環境や技術的な側面を考察するなど、多様な知識と研究手法を統合的に活用することを目指します。

日本において、「地域科学部」という名称で最初に創設されたのは、国立大学である岐阜大学地域科学部です。1996年10月に設置されて以来、国立大学としては同学部が唯一の存在であり、日本の高等教育における地域研究・教育のユニークな拠点の一つとなっています。

岐阜大学地域科学部で対象とされる学問分野は非常に広範です。具体的には、人間の思考や存在を深く探求する哲学、言語や文化、表現を扱う文学・言語学、社会のルールや制度を学ぶ法学、経済活動の仕組みを理解する経済学、社会の構造や集団の行動を分析する社会学、人間の心の働きを解き明かす心理学、人類の進化や文化を研究する人類学、地域の伝統や暮らしに関わる民俗学といった人文・社会科学分野から、物質の性質やエネルギーを扱う物理学・化学、生命現象を研究する生物学といった自然科学分野まで、多岐にわたる領域を包含しています。このような幅広い分野を学ぶことで、学生は地域課題を多角的に捉え、その根本原因を探り、持続可能な解決策を提案するための総合的な知見と能力を培います。

地域科学部と同様に地域を名称に含む学部として、鳥取大学などに設置されている「地域学部」や、高崎経済大学地域政策学部（公立大学として1996年4月設置）などに代表される「地域政策学部」、比較的新しい傾向にある「地域創生学部」などがあります。これらの学部も地域を対象としていますが、それぞれ教育内容や重点が異なります。例えば、地域政策学部は政策立案や行政分野に焦点を当てる傾向があり、地域創生学部はより実践的な地域活性化に重点を置くことが多いでしょう。また、広範な学問分野を横断的に学ぶ点では「教養学部」と共通する側面もありますが、地域科学部が「地域社会」という具体的な対象に明確に焦点を当てている点が特徴です。地域科学部で培われる文理横断的な思考力や総合的な問題解決能力は、現代社会が求める人材像とも重なり、卒業後は地域社会の各分野で活躍することが期待されます。

地域科学部は、特定の専門分野に特化するのではなく、多様な視点から地域を深く理解し、地域社会のより良い未来を創造するための知と実践を追求する、現代社会のニーズに応える学部と言えるでしょう。

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