地域自治区

地域自治区とは

地域自治区は、日本の地方自治制度における、市町村の内部組織の一つです。市町村長が持つ権限の一部を地域に分掌させ、住民の意見を反映させながら行政を執行するために、条例に基づき設置されます。

地域自治区には、地方自治法に基づいて設置されるものと、市町村の合併の特例に関する法律（合併特例法）に基づいて設置されるものの2種類があります。どちらも地域住民の自治意識を高め、地域に根ざした行政運営を促進することを目的としていますが、設置要件や運営方法にいくつかの違いがあります。

地方自治法に基づく地域自治区

地方自治法に基づく地域自治区は、市町村長の権限に属する事務を分掌させ、住民の意見を反映させながら処理するために設置されます。

特徴

設置: 市町村の条例により設置され、市町村の全域に設置する必要があります。一部の区域のみに設置することはできません。ただし、総務省は、段階的な設置を認めています。
法人格: 法人格を持たない、市町村の内部組織です。恒久的な組織とされ、設置期間の定めはありません。
事務所: 地域自治区には事務所が置かれ、事務所の長には市町村の職員が任命されます。市町村長は、事務所の長に事務の一部を委任することができます。

地域協議会

地域自治区には、住民の意見を反映するための地域協議会が設置されます。

構成員: 地域協議会の構成員は、市町村長によって、地域自治区の区域内から選任されます。報酬は支払われない場合があります。
役割: 地域協議会は、地域自治区の事務に関する事項や市町村の事務処理に関する事項について、市町村長やその他の機関から諮問を受け、または自ら審議して意見を述べます。また、市町村長は、地域自治区に関わる重要な政策を決定・変更する際には、事前に地域協議会の意見を聞かなければなりません。

指定都市における特例

指定都市においては、地域自治区の区域を区の区域を分けて定める必要があります。また、一部の区の区域にのみ地域自治区を設置することも可能です。総合区についても同様の規定が準用されます。

合併特例法に基づく地域自治区

合併特例法に基づく地域自治区は、市町村の合併に伴い設置される、住民の感情面への配慮や合併後の自治体における地方自治の形骸化を避けるためのものです。合併前の市町村の区域を単位として設置されます。

特徴

設置: 合併前に、関係市町村の議会の議決を経た協議によって決定されます。
区域: 合併前の市町村の区域が、そのまま地域自治区の区域となります。複数の旧市町村をまとめて一つの地域自治区とすることはできますが、旧市町村の区域を分割することはできません。
存続期間: 関係市町村の協議によって定められます。期間に制限はありません。
区長: 必要に応じて、事務所の長に代えて特別職の区長を置くことができます。区長は、地域の行政運営に関し優れた識見を有する者のうちから、合併後の市町村長が選任します。任期は2年以内で、市町村の常勤職員との兼任はできません。

住所表記

市町村合併により設置された地域自治区の区域内では、住所の表記に地域自治区名（例：〜区、〜町、〜村）が追加されます。設置期間終了後、地方自治法による地域自治区が設置された場合も同様です。

関連項目

自治区
地域自治区の一覧
合併特例区
* 日本の市町村の廃置分合（市町村合併）

地域自治区は、地域住民の声を反映した、より地域に密着した行政運営を実現するための重要な制度です。地方自治法と合併特例法に基づき、それぞれの地域の特性に応じた自治のあり方を追求していくことが求められています。

もう一度検索