地方競馬法

地方競馬法：戦後日本の競馬復興を支えた法令

1946年（昭和21年）、終戦直後の混乱期に制定された地方競馬法（昭和21年法律第57号）は、日本の競馬史において重要な転換点を示す法律です。戦前の地方競馬規則や軍馬資源保護法が廃止されたことにより、闇競馬が横行する状況の中、地方競馬の復興を図るために制定されました。

法令制定の背景

終戦により、それまでの地方競馬を規定する法律や規則が失効。社会不安定の中、闇競馬が蔓延する事態となりました。こうした状況下、地方競馬の健全な発展と社会秩序の維持を目的に、地方競馬法が緊急に制定されたのです。 この法律は、地方競馬の開催や運営に関する基本的な枠組みを定め、戦後の混乱期における競馬の復興に大きく貢献しました。

地方競馬法の主要な内容

地方競馬法は、地方競馬の開催、運営に関する様々な規定を盛り込んでいました。

主催者: 当初は馬匹連合会、または中央馬事団体（公益法人）が主催者として位置付けられました。これは、地方競馬の運営を組織的に行うための体制整備を図ることを目的としていました。
競馬場の数: 当初は北海道に3ヶ所、その他の都府県に1ヶ所以内と限定されていましたが、1947年（昭和22年）には北海道6ヶ所、その他の都府県2ヶ所以内へと拡大されました。これは、地方競馬の需要の高まりと、より多くの地域で競馬を開催する必要性から変更されたと考えられます。
開催日数: 各競馬場につき、年間4開催まで、1開催につき6日以内と定められていました。これは、競馬の開催頻度を適切に管理し、ギャンブル性の抑制にも配慮した結果でしょう。
馬券: 地方競馬における馬券発売は、鍛錬馬競走に次いで許可されました。これは、地方競馬の財政基盤を強化し、その持続可能性を確保するための重要な措置でした。
ばんえい競走の公認: 地方競馬法において、ばんえい競走が初めて公認されました。これは、北海道独特の競馬であるばんえい競走を、地方競馬の一環として位置付けることで、その発展に貢献したと言えるでしょう。
主務官庁: 農林省畜産局が主務官庁でしたが、馬券税に関する業務は当時存在した大蔵省主税局総務課が担当しました。総務省自治行政局の前身となる部署は内務省地方局行政課でしたが、内務省自体は所管官庁ではありませんでした。このことは、地方競馬の運営が複数の官庁にまたがる複雑な体制で行われていたことを示しています。

地方競馬法と新競馬法

地方競馬法で定められた内容は、1948年（昭和23年）に公布された新競馬法に統合されました。新競馬法は、地方競馬と中央競馬を統合的に扱う法律として制定され、地方競馬法はそれ以降、法的効力を失いました。しかし、地方競馬法は戦後の混乱期における地方競馬の復興に大きく貢献したという意味で、日本の競馬史に重要な足跡を残しています。

参考文献

『地方競馬史』第一巻 地方競馬全国協会 1972年
『地方競馬史』第二巻 地方競馬全国協会 1974年

地方競馬法は、戦後の混乱期において、地方競馬の復興と発展に重要な役割を果たした法令でした。その内容を理解することは、現代の競馬を取り巻く状況を理解する上でも重要な視点となります。

もう一度検索