地獄めぐり

『地獄めぐり』は、日本のゲームメーカーであるタイトーによって開発され、1988年にアーケードゲームとして稼働を開始したアクションゲームです。海外市場では『Bonze Adventure』の名称でリリースされました。この作品は、日本の仏教や民話における地獄の世界観をモチーフにした、独特な和風ファンタジーアクションとなっています。

物語の導入として、恐ろしい地獄の支配者である閻魔大王が突如として乱心してしまいます。この事態を収拾するため、プレイヤーは高徳な僧侶、1人プレイでは「覚蓮坊（かくれんぼう）」、2人同時プレイ時には2Pキャラクターとして「東仙坊（とうせんぼう）」を操作し、荒れ果てた地獄界へと足を踏み入れます。目的は、様々な困難を乗り越え、閻魔大王の心を再び正すことです。

ゲームシステム

操作は、一般的なアーケードゲームと同様に、4方向に対応したレバーと攻撃、ジャンプの2つのボタンを使用して行います。プレイヤーキャラクターは、僧侶の姿をした可愛らしい小坊主です。基本的な攻撃方法は、「魔破珠（まはじゅ）」と呼ばれる不思議な玉を投げつけることです。この魔破珠は重力の影響を受けて落下し、地形に当たると跳ね返る性質を持っています。この跳ね返りをうまく利用することが攻略の鍵となります。

さらに、地上または空中でレバーを下に入れながら攻撃ボタンを押すことで、強力な「スペシャル珠攻撃」を発動できます。このスペシャル攻撃はストック制となっており、ゲーム中で手に入る特定のアイテムによって最大4回分まで蓄えることができます。スペシャル珠攻撃の種類は、やはりアイテムによって異なり、画面全体を攻撃する、特定の方向に炎を放つ、敵の頭上に雷を落とすなど、3つのバリエーションが存在します。ジャンプアクションは、ボタンを押している時間に応じて高さが変化する仕組みで、空中でもレバーによってある程度の軌道修正が可能です。

ミスとゲームオーバー

プレイヤーがミスとなる条件はいくつかあります。敵キャラクターに直接接触したり、ステージ上の火、海、血の池といった危険な液体に落ちたり、鋭利な刺に触れたりするとダメージを受け、残機を一つ失います。また、敵が放つ弾を受けることでもミスとなりますが、特定のボスキャラクター「竜神」との戦闘では、その弾を累計4回受けるとミスになるという特殊なルールが適用されます。さらに、画面上部に表示されている「ろうそくタイマー」が時間切れで燃え尽きた場合もミスとなります。

残機がすべて無くなった状態でミスをするとゲームオーバーです。ゲームオーバー時には、到達したステージに応じて異なる閻魔大王からの「お言葉」が表示される演出があります。その後、ネームエントリー画面へと移行します。コンティニュー機能は回数無制限で使用できますが、コンティニューを選択するとそれまでのスコアはすべてリセットされてしまいます。

多彩なアイテム

地獄めぐりの道中では、冒険の手助けとなる様々なアイテムが出現します。色のついた魔破珠を拾うことで、スペシャル珠攻撃のストックが増えます。ストック表示は、プレイヤーの持つ魔破珠のサイズで示され、最大4段階まで大きくなります。数珠を取ると、魔破珠の連射性能が向上し、より素早く攻撃できるようになります。勾玉は、魔破珠の地形反射回数を増やし、攻撃が届く範囲を広げる効果があります。

お守りは得点アイテムですが、単なる点数加算にとどまらず、10個セットで取った際の点数が、プレイヤーの現在のスコアに応じて上昇していくという特徴があります。特定のスコアを超えると、お守りの価値が飛躍的に増大します。特殊なお守りは、高得点が得られるだけでなく、入手した時点でスペシャル珠攻撃のストックが最大になるという強力な効果を持っています。ろうそくは、制限時間を示すタイマーを回復させてくれます。鏡は、一定時間プレイヤーを無敵状態にするだけでなく、特定の結界や障害物を破壊する能力も持ちます。人形は、いわゆる1UPアイテムで、プレイヤーの残機を1つ増やします。観音像は、プレイヤーに後光を付与し、一度だけミスを防いでくれるバリアとして機能します。炎や水に落ちても、後光が消えるだけで済みます。

地獄のステージ構成

プレイヤーが巡る地獄は、全8つのエリアで構成されています。不気味な墓場から始まる「1丁目荒寺の墓場」に続き、伝説の川である「2丁目三途の川」を渡ります。そして、炎に覆われた「3丁目火炎地獄」、血の池が広がる「4丁目血の池地獄」、凍てつく世界「5丁目氷地獄」、そして「6丁目迷い地獄」へと進みます。これらの地獄を突破した先に待つのが、閻魔大王の居城である「7丁目閻魔の洞窟」と、最終ボスとの決戦の場です。最終ボスを打ち破ることでエンディングを迎え、ゲームは終了となります（1周クリアで完結するタイプです）。

移植と評価

本作は、後にNECアベニューからPCエンジンへの家庭用移植版も発売されました。また、2006年にはLet's!TVプレイ版として、本作のキャラクターを用いたアレンジ版『奇々怪界〜覚蓮坊』が収録された単体ハードも登場しています。

アーケード版は、当時のゲーム専門誌で一定の評価を受けました。1988年の『ゲーメスト』誌の企画では、年間ヒットゲームの35位にランクインしています。同誌のムック本では、坊主というユニークな主人公や、魔破珠の独特な攻撃方法、血の池や氷などバラエティに富んだステージデザイン、隠し通路の多さなどが、プレイヤーを楽しませる要素として挙げられています。PCエンジン版も複数のゲーム誌でレビューが行われ、様々な点数が記録されています。

独特な世界観と操作性、個性的な敵やアイテムなど、当時のアーケードゲームとしては異彩を放つ一作として記憶されています。

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