地球は女で回ってる

ウディ・アレン監督・脚本・主演による1997年のアメリカ映画『地球は女で回ってる』（原題：Deconstructing Harry）は、作家ハリー・ブロックの複雑な私生活と創作活動の苦悩を描いたブラックコメディです。

ハリーはニューヨークに住む小説家で、これまで自身の経験や周囲の人々をモデルにした小説を執筆し、大きな成功を収めてきました。しかし、最近の彼は創作のネタ切れに悩まされ、スランプに陥っています。その原因は、私生活を赤裸々に小説に書き綴ってきたことにあります。元妻3人と不倫相手たちから激しい怒りを買っているのです。

映画は、ハリーが自身の小説のアイデアを探し求める過程で、過去の恋愛や結婚生活、そして現在の関係にまつわる様々なエピソードをフラッシュバック形式で振り返る構成になっています。彼の周囲には、個性豊かな女性たちが存在します。元恋人フェイ、精神分析医である2番目の妻ジョーン、3番目の妻ジェーン、そしてジェーンの妹でハリーと不倫関係にあるルーシーなどです。彼とジョーンの息子ヒリーや、ハリーの友人たち、そして小説の登場人物たちも物語に深く関わってきます。

ハリーの作品は、彼自身の経験や周囲の人々を反映したフィクションです。小説の中に登場する登場人物たちは、現実の人物と重ね合わせられる描写が多く見られます。例えば、ハリーの姉ドリスとジョーンをモデルにした女性ヘレン、最初の結婚時のハリーをモデルにした青年ハーヴィー、ルーシーとの不倫中のハリーをモデルにした男ケン、ジョーンとの結婚時のハリーをモデルにした男ポールなどが登場します。さらに、ハリー自身を投影したような、ピンボケになってしまった男メルも描かれています。これらのキャラクターを通して、ハリーの自己矛盾や葛藤が浮き彫りになります。

映画全体を通して、ウディ・アレン独特のユーモラスでシニカルな語り口が貫かれています。ハリーの自己中心的で不器用な性格、そして女性たちとの複雑な関係は、時にコミカルに、時に痛烈な皮肉を込めて描かれています。さらに、映画にはアニー・ロス、スタン・ゲッツ、エロル・ガーナー、ベニー・グッドマン、ジャンゴ・ラインハルト、ステビンズ・ホール・バンドなど、ジャズの巨匠たちの名曲が効果的に使用されており、独特の雰囲気を醸し出しています。

『地球は女で回ってる』は、単なる恋愛映画やコメディ映画にとどまらず、自己と他者、現実と虚構の境界線を曖昧にしながら、創作活動と私生活の複雑な関係を深く探求した作品です。ウディ・アレンの才能が存分に見られる、見応えのある映画と言えるでしょう。

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