地球平和監視時計

広島平和記念資料館の地球平和監視時計：人類への警鐘

広島平和記念資料館には、独特の存在感を放つ『地球平和監視時計』が設置されています。高さ3.1メートルの御影石製の時計塔は、広島市出身の彫刻家、岡本敦生氏によるデザインです。単なる時計ではなく、人類の未来、そして地球の平和を問いかける、象徴的なモニュメントと言えるでしょう。

この時計は、NPO法人「広島からの地球平和監視を考える会」によって2001年7月24日に設置され、同年8月6日に除幕式が行われました。時計塔の一番上には、現在の時刻を示すアナログ時計があり、文字盤には薄く8時15分――広島への原爆投下時刻――が刻まれています。この時刻は、二度と繰り返してはならない悲劇の記憶を刻み込むと共に、平和への願いを込めた、静かな訴えとして存在感を放っています。

アナログ時計の下には、2つの日数カウンターが備え付けられています。1つ目のカウンターは、広島への原爆投下からの日数を示し、2つ目のカウンターは、最後の核実験からの日数を表示します。これらのカウンターは、人類が直面する核の脅威を常に意識させる役割を担っています。

さらに、日数カウンターの下には15個の歯車が連なっています。一番上の歯車は毎分100回転します。この歯車の回転は、核実験などによる地球環境の危機的状況の深刻化を象徴的に表現しており、徐々に下の歯車へと回転が伝わっていく仕組みになっています。そして、最終的に一番下の歯車に回転が伝わった瞬間、装置全体が自壊する設計となっています。これは、破滅に向かう地球と人類、そして、その破滅を食い止めるために世界中の人々が協力しなくてはならないという切実なメッセージを表現しています。

最後の核実験からの日数は、新たな核実験が行われたことが確認されるたびにリセットされます。2024年5月14日には、アメリカによる臨界前核実験が行われたことにより、29回目のリセットが行われました。これまでに最も長い期間、カウンターがリセットされずに記録されたのは、2021年9月16日から2024年5月14日までの976日間でした。過去29回のうち、アメリカによるリセットが23回（イギリスとの合同実験を含む2回）、北朝鮮によるリセットが6回となっています。

地球平和監視時計は、単なる計時器ではなく、核実験という現実と、平和への願いが複雑に絡み合った、強力なメッセージを発信する存在です。広島という土地に建てられたその存在は、平和への希求と、二度と核兵器が使われることのない未来への誓いを強く印象づけます。時計が示す数字は、私たちに平和への責任を問い続け、未来への行動を促す、静かな呼びかけなのです。この時計塔は、広島、そして世界中の人々にとって、平和への祈りと、未来への警鐘を鳴らし続ける存在であり続けるでしょう。

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