地車

地車（だんじり）とは

地車（だんじり）は、神社の祭礼で用いられる屋台の一種で、特に近畿地方で多く見られます。二段に分かれた特徴的な破風屋根を持ち、彫刻や刺繍幕、提灯などで豪華に装飾されています。主にケヤキで作られ、コマには松が使われます。

大阪府から兵庫県南東部にかけては、二段の屋根を持つ上地車・下地車を指しますが、他の地域では一段屋根の山車を指すこともあります。「だんじり」という読み方は俗称で、本来は「じぐるま」と読みます。地車は、祭礼で曳かれる屋台全般を指す広義な意味も持ちます。

概要

近畿地方の泉州・河内・摂津地域を中心に、地車祭りが開催されています。地車祭りは、地車を曳き、地車囃子を奉納する祭礼の総称です。特に岸和田だんじり祭が有名で、夏から秋にかけて各地で行われます。

祭礼での地車の運行は、疫病退散や五穀豊穣を祈願する意味を持ちます。かつては神社や氏子、自治会が運営していましたが、近年では地元住民の楽しみとしてのイベント要素が強くなっています。

歴史

地車囃子の起源には諸説あり、豊臣秀吉による大坂城築城の際、巨石運搬時の掛け声が元になったという説が有力です。また、徳川家光時代には、大阪天満宮で地車の宮入が始まったという記録もあります。

江戸時代には、祭礼で鳴り物を乗せた屋台が練り歩く風習がありましたが、現在の地車の原型が登場したのは江戸末期から明治にかけてです。初期の地車は彫刻が簡素でしたが、時代とともに装飾が豪華になっていきました。彫刻の題材も、神獣や中国の故事から、神話や軍記物へと変化していきました。特に、明治期の講談の流行により、武将を題材とした彫刻が好まれるようになりました。

幕末から昭和初期にかけては、地車大工や彫師が大阪に多く存在し、淡路島も地車の産地でした。堺は、地車発祥の地とされる説もありましたが、明治時代に地車同士の喧嘩が原因で運行が禁止され、衰退しました。

堺

堺では、元禄時代に鉾が作られ、これが地車の原型になったとも言われています。しかし、明治時代に地車の運行が禁止され、ふとん太鼓のみが巡行を許可されるようになりました。それでも、堺は地車文化の重要な拠点であり、堺の地車が近畿各地に影響を与え、各地に販売されたことで、堺型の地車が広まりました。

昭和期には地車が衰退しましたが、近年では再び新調する動きが出てきました。しかし、岸和田の影響を受けた上地車や下地車が増え、伝統的な堺型は減少しています。

大阪市中・なにわ

大阪市中では、天満界隈で地車囃子が盛んですが、現存する地車は一台しかありません。かつては多くの地車が曳行されていましたが、大塩平八郎の乱や太平洋戦争で焼失し、戦後の都市化によって減少しました。しかし、地車が曳行されない地域でも、夏祭りで地車囃子が奉納される神社は少なくありません。また、平野郷では、今でも地車祭りが盛んに行われています。

岸和田

岸和田は現在、最も盛んに地車祭りが開催される地域です。岸和田だんじり祭りは、五穀豊穣を祈願する稲荷祭に由来し、町衆による奉納として始まりました。当初は俄かや狂言が行われていましたが、やがて鳴り物を乗せた台車を曳くようになり、改良を重ねて現在の岸和田型地車が完成しました。

岸和田型地車の特徴は、高速で辻を回りきる「やり回し」です。近年では、新興住宅地でも地車の新調が盛んに行われています。

泉大津

泉大津の地車は、飯山渡御に由来します。かつて旱魃に見舞われた際、天皇が米を施し、その米を台車に乗せて雨乞いをしたのが始まりとされています。この渡御は、現在でも穴師地区で続けられています。泉大津では、地車同士をぶつけ合う「カチアイ」が名物となっています。

地車の型

地車は大きく分けて「下地車」と「上地車」の2種類があります。下地車は、岸和田型とも呼ばれ、大屋根を支える柱が二重構造になっているのが特徴です。重く安定しており、やり回しに適しています。一方、上地車は、下地車よりも軽く、地域によって様々な形態があります。

上地車は、担い棒を使って「差し上げ」や「横しゃくり」などの曲芸的な曳き回しをすることがあります。また、一部地域では「ぶん回し」という高速回転の曳き回しを行うこともあります。

下地車

主に泉州地域で見られ、重厚な造りと、やり回しに適した安定性が特徴です。彫刻が精緻で、新調には高額な費用がかかります。

上地車

泉州地域以外に多く見られ、地域によって様々な形態があります。特徴的な曳き回しが魅力です。

地車囃子

地車囃子には、地域ごとに異なる特徴があります。泉州地域では、小太鼓・大太鼓・鉦・笛を用い、河内地域では、大太鼓・小太鼓・鉦に加え、曳き唄のマイクも使われます。摂津地域では、親太鼓・子太鼓・鉦を用います。大阪市北部には、地車が消滅しても地車囃子だけが残っている地区もあります。地車囃子は、郷土芸能としても発展しており、イベントで披露されることもあります。

地車踊り

摂津地域や河内地域の一部では、地車に合わせて踊る「地車踊り」が見られます。

流派

地車踊りには、「ヒガシ」の天満流と「キタ」の長柄流という二つの流派があります。天満流は龍踊りと呼ばれることが多く、大阪天満宮で奉納されています。長柄流は、手を突くことで運をつくというゲン担ぎが基本です。

地車の歌

香川県では、地車を曳きながら「口説き」という歌を歌う風習があります。

手打ち

地車を曳いている際や、囃子を奉納している際に祝儀をいただくと、「手打ち」を行います。「大阪締め」と呼ばれる手打ちが一般的です。

掛け声

岸和田では、「ソーリャ、ソーリャ」という掛け声が使われます。堺周辺では、かつて「デンデコデーゴーデン」という掛け声が使われていましたが、近年は岸和田の影響で「ソーリャ、ソーリャ」が普及しています。大阪市城東区では、「アイ、サイ、サーイ」のような掛け声が使われています。

近畿各地のだんじり祭り一覧

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脚注

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関連項目

（関連項目は省略）

外部リンク

（外部リンクは省略）

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