坂井義則

坂井義則について

坂井義則（さかい よしのり、1945年8月6日 - 2014年9月10日）は、日本を代表する元陸上競技選手であり、報道関係者としても活躍を遂げた。彼の名は、1964年の東京オリンピックにおかしなかたちで刻まれることになった。坂井は、広島市に原子爆弾が投下された1時間半後、広島県の三次市に誕生した。特異な背景を持ちながらも、彼自身は直接的な被爆者ではなかったが、父親が被爆者健康手帳を持つなど、家庭にその影響を受けていた。

学生時代の活躍

坂井は、広島県立三次高等学校在籍時に、1963年の第19回国民体育大会で400ｍ走で優勝。この功績を背景に、1964年に早稲田大学に入学し、陸上競技部で活躍を続ける。しかし、彼は東京オリンピックへの出場を目指すも、代表選考会で敗退し、挫折を味わうことになる。この時、彼の運命を大きく変える出来事が待っていた。

聖火リレー最終ランナー

東京オリンピックの開会式では、聖火リレーの最終ランナーとして坂井が指名された。これは「広島への原爆投下の日」にちなんだ意味を持っており、全国から期待を寄せられた。開会式当日、坂井は国立霞ヶ丘競技場で聖火を受け取り、トラックを駆け抜け、聖火台に火を灯した。その姿は、アメリカの有名なスポーツ雑誌『スポーツ・イラストレイテッド』の表紙に掲載され、坂井は初めてこの雑誌の表紙を飾る日本人となった。

陸上選手としてのキャリア

聖火リレー後も、坂井は400ｍと1600ｍリレーで名を馳せ、特に1966年のバンコクアジア大会では1600ｍリレーで優勝し、400ｍでは銀メダルを獲得する。オリンピックには出場していないが、彼の実績は高く評価された。坂井は1968年にフジテレビに入社し、その後はスポーツと報道の分野で数々の重要な役割を果たすようになる。

フジテレビでの活動

フジテレビでは、坂井はスポーツ報道の担当をし、特に1972年のミュンヘンオリンピックや1996年のアトランタオリンピックにおいて重要な役割を担った。ミュンヘン大会では、テロ事件が発生し、坂井は日本選手団のユニホームを着て選手村に潜入し、現地から速報を行った。その時の経験が、坂井の報道への情熱を一層掻き立てたと言われている。

最後の活動と死

2005年にフジテレビを退職後も、坂井は関連会社でエグゼクティブプロデューサーとして活動し、後進の指導にも関わっていく。2020年の東京オリンピック開催決定を見届けた後、2014年に69歳でその生涯を閉じた。坂井義則は、単なる陸上選手に留まらず、文化人としての顔も持ち合わせ、教訓と歴史を私たちに残した人物であった。

映画やドラマでの再現

彼の人生は、NHKの大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』でも描かれ、聖火リレーの最終走者として登場したシーンは多くの視聴者の心に残った。

坂井義則の遺産は、今でも多くの人に影響を与え続けている。

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