坂戸城 (常陸国)

坂戸城

概要

茨城県桜川市西飯岡字伊勢代にかつて存在した日本の城郭、坂戸城は、山城として築かれました。その立地は、標高218メートルを誇る城山山頂であり、周囲を見渡せる要害の地でした。この城は、当初、宇都宮氏の有力な家臣であった小宅氏によって築城され、代々その居城として用いられました。坂戸城は、その地理的な重要性から、戦国時代中期における宇都宮氏と小田氏という二大勢力間の対立において、幾度となく激しい攻防の舞台となりました。

歴史

坂戸城の歴史は、宇都宮氏の家臣であった小宅高国によって築かれたことに始まります。小宅氏にとって坂戸城は、自身の所領を治めるための拠点であると同時に、宇都宮氏の南側における重要な防衛線、すなわち小田氏との境界に位置する最前線の城としての役割を担っていました。

戦国時代中期になると、常陸国北部から下野国にかけて勢力拡大を目指す小田氏と、これを迎え撃つ宇都宮氏の間で、境界地域の城郭を巡る争いが激化します。坂戸城もまた、このような両氏のせめぎ合いの中で、その戦略的な位置から重要な目標と見なされるようになり、度々攻撃の対象となりました。

特に大きな動きがあったのは天文18年（1549年）のことです。この年、宇都宮氏は喜連川五月女坂の戦いにおいて、当時の当主であった宇都宮尚綱を失うという大きな打撃を受けました。主君の討死によって宇都宮氏の勢力が一時的に混乱したこの機を逃さず、小田氏は坂戸城への攻撃を開始します。小田氏の攻勢の前に坂戸城は陥落し、小田氏の家臣である信太氏が城主となりました。しかし、宇都宮氏もこの状況に甘んじることなく、素早く反撃の兵を起こし、坂戸城を奪還することに成功しました。これにより、坂戸城は再び宇都宮氏の支配下に戻ります。

その後、永禄7年（1564年）にも、再び小田氏による坂戸城への大規模な侵攻が行われます。この時、小田氏の軍勢を率いていたのは、家臣の信太頼範でした。坂戸城の城主であった小宅尚時は、主君である宇都宮広綱に対し救援を要請するとともに、城に籠もり、小田氏の猛攻に耐えようと努めました。しかし、小田氏の攻撃は非常に激しく、坂戸城はついに攻め落とされ、再び小田氏の手に渡ってしまいます。城主の小宅尚時は、辛うじて城を脱出し、近隣に位置する小栗城へと逃れました。

しかし、坂戸城を巡る両氏の争いはこれで終わることはありませんでした。宇都宮氏は、再び坂戸城の奪回を目指して強力な反攻作戦を展開します。この宇都宮勢による反撃は成功し、坂戸城は再び落城することとなりました。この戦いの中で、小田氏側の指揮官であった信太頼範は討死を遂げたと伝えられています。こうして、坂戸城は三度宇都宮氏の支配下に戻り、元の城主であった小宅氏がその地位を取り戻すこととなったのです。

このように、坂戸城は戦国時代中期、宇都宮氏と小田氏という二つの勢力の間で激しい争奪の的となり、その支配者が目まぐるしく入れ替わるという波乱に満ちた歴史をたどりました。城の存在は、この地域の戦略的な重要性を示すものであったと言えます。

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