小栗城

小栗城

小栗城（おぐりじょう）は、現在の茨城県筑西市小栗に位置していた日本の山城です。小栗判官伝説で知られる小栗氏の居城として築かれ、その歴史は平安時代末期にまで遡ります。城は小貝川に沿った丘陵地形を利用して築かれていました。

築城と小栗氏の時代

平安時代末期、常陸国の大掾氏の分家とされる小栗氏によって築城されました。以来、小栗氏は代々にわたりこの城を本拠として勢力を維持しました。城は小栗氏の政治的、軍事的な拠点として機能し、地域の支配の中心となりました。

室町時代に入ると、小栗城は歴史的な大事件の舞台となります。永享10年（1438年）に勃発した「永享の乱」に続いて起こった「小栗満重の乱」です。当時の小栗城主であった小栗満重は、京都扶持衆（室町幕府の直臣として鎌倉公方に対抗する勢力）の一員として、鎌倉府の足利持氏に対し反乱を起こしました。小栗満重らは各地で激しい戦闘を展開しましたが、圧倒的な鎌倉府軍の前に次第に劣勢に立たされ、最終的に小栗城に追い詰められます。満重は城で籠城戦を展開しましたが、ついに力尽き、この城で自刃したと伝えられています。この反乱の鎮圧により、小栗氏は一時的に没落し、小栗城およびその周辺に広がっていた小栗御厨は鎌倉府の支配下に置かれました。

しかし、小栗氏の歴史はここで終わりませんでした。足利持氏が永享の乱で滅亡した後、関東地方では再び大規模な内乱である「結城合戦」が勃発します。この戦いにおいて、小栗氏の一族とされる小栗助重が功績を挙げたことが認められ、旧領への復帰と小栗氏家督の継承が許されました。こうして小栗氏は一時的にではありますが、かつての支配地に戻ることができました。

復権を果たした小栗氏でしたが、再び激動の時代に巻き込まれます。享徳4年（1455年）、関東地方における室町幕府と鎌倉府（古河公方）の対立から「享徳の乱」が始まります。この乱において、足利成氏（古河公方）からの攻撃を受けた小栗氏は、ついにその勢力を失い、完全に滅亡に至りました。

戦国時代の城郭

小栗氏が滅亡した後も、小栗城は廃城となることなく使用され続けました。戦国時代には、下野国の戦国大名であった宇都宮氏の支配下に入ります。宇都宮氏は、この城を家臣である小宅氏（おやけし）に任せ、その居城としました。

この時代の小栗城は、地理的に重要な位置にあったため、宇都宮氏の領国を守るための重要な拠点となりました。特に、南西に位置する小田城を本拠とする小田氏や、西の下館城・久下田城を本拠とする結城氏家臣の水谷氏といった周辺の有力な敵対勢力に対する備えとして機能しました。宇都宮氏は、小栗城を近隣の坂戸城（現在の筑西市に存在した別の城）とともに防衛ラインの中核として整備・運用しました。

戦国時代の争乱の中で、小栗城は度々攻撃にさらされました。天文21年（1552年）には、当時の城主であった小宅尚時の代に、結城氏の攻撃を受けて城は一時的に陥落し、結城氏の手に渡ってしまいます。しかし、永禄3年（1560年）には、宇都宮氏当主の宇都宮広綱によって奪還され、再び宇都宮氏の支配下に戻ることができました。これは、宇都宮氏がこの地域の戦略的重要性がいかに高いと考えていたかを示す出来事と言えます。

小栗城が最終的にいつ頃廃城となったか、または他の勢力に移ったかについての明確な情報は限られますが、戦国時代の終焉とともにその役割を終え、歴史の中に埋もれていったと考えられます。

現在、小栗城跡は茨城県筑西市小栗に残されており、往時の面影をわずかに留めるのみとなっています。しかし、城の存在は、小栗氏の興亡や室町・戦国時代の激しい争乱の歴史を現代に伝えています。

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