坂東三津五郎 (3代目)

三代目 坂東三津五郎（1775年 - 1832年）は、文化文政期に活躍した歌舞伎役者です。俳名として是業・秀佳・秀哥を名乗り、屋号は大和屋でした。

生涯

初代坂東三津五郎の子として生まれ、安永7年（1778年）に江戸森田座で坂東三田八として初舞台を踏みました。その後、天明2年（1782年）に初代坂東巳之助を襲名しますが、父の死後、八代目森田勘彌の養子となり、翌年には二代目森田勘次郎となりました。同年11月には森田座で若太夫として舞台に立ち、後に立役として活躍しました。

寛政5年（1793年）には初代坂東簑助を名乗り、この頃から江戸随一の和事師として名を馳せました。寛政11年（1799年）には、二代目坂東三津五郎が二代目荻野伊三郎を襲名したのを受け、三代目坂東三津五郎を襲名しました。深川永木河岸に住んでいたことから、「永木の三津五郎」または「永木の親方」とも呼ばれていました。57歳で亡くなり、墓所は東京都港区の増上寺にあります。

芸風と業績

当たり役として、『伽羅先代萩』（花水橋）の足利頼兼、『一谷嫩軍記』（熊谷陣屋）の熊谷直実、『源平布引滝』（実盛物語）の斎藤実盛などが挙げられます。時代物と世話物を得意とし、特に武道事や力士の演技に優れていました。四代目鶴屋南北と提携し、彼の作品に数多く出演したほか、三代目中村歌右衛門と舞台でその技を競い合いました。

踊りにも才能を発揮し、『娘道成寺』を得意として度々演じました。三代目歌右衛門とともに変化舞踊も頻繁に披露し、その多くが現代にまで伝わっています。また、日本舞踊の五大流派の一つである坂東流の流祖でもあります。弟の坂東志賀次は志賀次派坂東流の元祖であり、その娘が祖宗の初代坂東志賀次です。

エピソード

ある演目で、小道具の張り子の茶碗のふちを爪ではじく型を工夫していた際のエピソードが残っています。裏方が気を利かせて茶碗を本物の瀬戸物の茶碗に替えたところ、「瀬戸物を瀬戸物に見せるのなんてぇのは誰にだって出来やがる。張り子の茶碗を瀬戸物に見せるところが役者の腕ってもんだろうが。ようやく瀬戸物らしく見えるようになってきたところに、てめえ余計なお世話だ」と激怒したと伝えられています。このエピソードは、三津五郎の芸に対する厳格な姿勢と、役者としてのプライドを示すものとして知られています。

参考文献

伊原敏郎　『近世日本演劇史』　早稲田大学出版部、1913年
野島寿三郎編　『歌舞伎人名事典』（新訂増補）　日外アソシエーツ、2002年

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