坂田三吉

坂田三吉について

坂田三吉（または阪田三吉）は、明治から昭和初期にかけて日本の将棋界で名を馳せた棋士であり、名人及び王将位の名誉を受けた人物です。彼は1870年7月1日に大阪府堺市に生まれました。「坂田」と「阪田」という異なる表記が存在しますが、どちらも同じ読みを持ちます。

幼少期と将棋の覚醒

坂田は堺市の舳松村で生まれ、幼少時は草履の表づくりを手伝いながら将棋に親しみました。1886年、彼は日本橋の履物店に丁稚奉公として勤め始め、町角の将棋対局に参加しては大人たちを相手に才能を発揮しました。しかし、将棋に没頭するあまり、奉公先の子供を負傷させてしまい、職を失うこととなります。その後、実家で賭け将棋に興じながら腕を磨き、アマチュアとしての名声を築いていきました。

プロ棋士の道への決意

1891年、坂田は棋士関根金次郎との初対局に臨み、惨敗を喫しました。この敗北がきっかけで、彼はプロ棋士を目指す決意を固めました。独学で将棋を学んでいた坂田は、関根を通じて初めて実力者である小林東伯斎と出会い、その指導を受けます。彼の才能は高く評価され、将棋界での道を歩み始めるのです。

競い合いと昇進

1903年、坂田は関根との対局において千日手に持ち込むなどし、実力を示す場面を見せました。彼はその後も数々の対局を繰り返し、1906年には名古屋で小菅剣之助と対戦し勝利を収め、棋士としての名声が高まります。1910年には関西将棋研究会を発足させ、自身を七段と名乗り、後援者を得ました。さらに関根や井上義雄と対戦し、数々の勝利を収め、知名度を上げていきました。

名人位と王将位への道

坂田は1914年に八段昇進を果たし、以後も多くの対局を重ねる中で将棋界での存在感を増していきました。1917年には、柳沢保恵伯爵の後援のもと、関根との平手対局を通じて名声を確立します。1919年には正式に八段に昇段し、1925年には関西将棋連盟から名人へ推薦され、名人位を名乗るようになります。

人生の晩年と影響

しかし、坂田の人生には波乱がありました。1933年には大阪朝日との関係が悪化し、孤立を深めることとなりました。最終的に1946年、彼は自宅で急死を迎えることとなりますが、その死は数多くの棋士やファンに覚えられました。彼の死後、1947年に戯曲『王将』が発表され、映画化されることになり、坂田三吉の名は将棋界に不朽のものとなったのです。そして、彼は1955年に名人位と王将位を追贈され、今なお将棋ファンの間で語り継がれています。

人物像とエピソード

坂田は教育に恵まれず、読み書きができませんでしたが、その代わりに将棋に対する非凡な感覚を持ち合わせていました。彼の独学のスタイルは、多くの棋士に影響を与え、後進の指導にも情熱を注ぎました。特に、坂田流向かい飛車や袖飛車などの戦法は現在も多くの棋士によって受け継がれています。

坂田の人生は、将棋のみならず彼自身の人柄や精神が反映されたものであり、特に貧困との闘いや、将棋界における礼儀正しさや人情味が強調されるエピソードが多く残されています。彼が一度の対局でも数多くの教訓を後世に残し、将棋界の精神的支柱としての役割を果たしていたことは、間違いありません。

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