柳沢保恵

柳沢保恵

柳沢保恵（やなぎさわ やすとし）は、1871年（明治3年）に生まれ、1936年（昭和11年）に没した、日本の統計学者、政治家、実業家、そして華族（伯爵）です。彼は第一生命保険の初代社長を務めたことで知られています。

生い立ちと家督

柳沢保恵は、越後柳沢家の当主である柳沢光昭の次男として生まれました。幼名は利丸、後に光敏と名乗りました。しかし、彼の出生前には、父の家督は養子である柳沢光邦が継いでいました。柳沢家の中で優秀な男子と見なされた保恵は、本家の養子となり、旧大和郡山藩主の柳沢保申の次女、秀子と婚約しました。1893年（明治26年）には、養父である保申の死去に伴い、家督を相続しました。また、保申の息子である柳沢保承を自らの養子としています。

学歴と留学

1894年（明治27年）に学習院を卒業した後、保恵はヨーロッパへ留学し、ドイツ、オーストリア、ベルギーの大学で統計学などを学びました。当初3年間だった留学期間は6年間に延長され、1900年（明治33年）にフランスやカナダなどを経て帰国しました。帰国後の1913年（大正2年）には、柳沢統計研究所を設立しました。

実業家、政治家としての活動

1902年（明治35年）には、新たに設立された第一生命保険の初代社長に就任しました。役員には、博文館社長で衆議院議員の大橋新太郎や、軍人の浜口茂之助が名を連ねました。1904年（明治37年）には貴族院議員となり、予算委員長も務めました。さらに、1918年（大正7年）からは東京市会議員となり、議長も歴任しました。これらの役職を通じて、日本の発展に貢献しました。

将棋愛好家としての側面

柳沢保恵は、将棋をこよなく愛し、多くの棋士を物心両面から支援したことでも知られています。彼は「将棋の殿様」と呼ばれ、坂田三吉や木村義雄十四世名人などの有力棋士を援助しました。特に坂田三吉は、柳沢の支援がなければ今の自分はなかったと語り、「御前様」あるいは「三位様」と呼んでいました。

栄典

柳沢保恵は、その功績により、1902年（明治35年）に正四位、1918年（大正7年）に正三位、1927年（昭和2年）には従二位を授与されました。また、1906年（明治39年）には勲四等旭日小綬章、1921年（大正10年）には第一回国勢調査記念章を受章しています。

家族

夫人である秀子との間には一男一女をもうけました。長女の露子は、外交官の岡本季正に嫁ぎました。

その他の関わり

柳沢保恵は、ニッカウヰスキーの設立にも関わっており、出資者の一人でした。ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝とは、竹鶴がスコットランド留学時代からの知人でした。

参考文献

『貴族院要覧（丙）』昭和21年12月増訂、貴族院事務局、1947年。
岡本嗣郎著『9四歩の謎』 集英社、1997年、ISBN 4-08-781146-8

外部リンク

コトバンク
柳沢文庫保存会
* 柳澤文庫

もう一度検索