垂直統合

垂直統合とは

垂直統合とは、企業が製品やサービスを市場に供給するまでのサプライチェーンにおいて、上流から下流までの工程を自社グループ内で統合するビジネスモデルです。具体的には、原材料の調達、製造、販売、物流といった一連のプロセスを、単一の企業グループ内で完結させることを指します。この戦略の目的は、コスト削減、効率化、品質管理の向上、そして競争優位性の確立です。

垂直統合のメリット

垂直統合には、以下のようなメリットがあります。

コスト削減: 中間業者を排除することで、マージンを削減し、コストを抑えることができます。
効率化: サプライチェーン全体をコントロールすることで、各工程間の連携がスムーズになり、生産効率が向上します。
品質管理: 自社で全ての工程を管理することで、品質の均一化や向上を図ることができます。
競争優位性: 他社が真似できない独自のサプライチェーンを構築することで、競争優位性を確立できます。
市場変化への対応力: 市場の変化に迅速に対応し、柔軟な生産体制を構築できます。

垂直統合のデメリット

一方で、垂直統合には以下のようなデメリットも存在します。

初期投資: サプライチェーン全体を自社で構築するため、多額の初期投資が必要になります。
リスク: 特定の事業に経営資源が集中するため、その事業が不振になった場合、大きな損失を被る可能性があります。
柔軟性の欠如: 外部の専門業者との連携が少なくなるため、技術革新や市場変化への対応が遅れる可能性があります。

様々な産業における垂直統合の例

映画業界

映画業界における垂直統合は、映画の製作、配給、興行という一連の流れを、同一の企業グループで独占することを意味します。アメリカでは、かつて大手映画会社がこの形態をとっていましたが、1940年代後半には独占禁止法に違反するとされ、解体されました。日本では、戦前から大手映画会社が垂直統合を行っていましたが、近年ではこの形態は少なくなっています。

製造業

製造業では、自動車産業や石油産業において垂直統合の例が見られます。自動車産業では、研究開発から部品製造、販売までを自社グループ内で行い、石油産業では、資源の探査から精製、販売までを自社グループで行います。また、ファーストリテイリングやダイソーのような製造小売業（SPA）も、企画、製造、販売を自社で行う垂直統合型のビジネスモデルです。

エレクトロニクス業界

日本のエレクトロニクス業界では、かつて垂直統合モデルが主流でしたが、近年ではその弊害が指摘されています。特に携帯電話業界では、通信事業者と端末メーカーが密接に連携した結果、国際的な競争力を失い、ガラパゴス化を招いたとされています。

垂直統合と水平統合

垂直統合とは対照的に、水平統合とは、同じ業界の複数の企業が統合することを指します。水平統合は、市場シェアの拡大や規模の経済を実現するための戦略です。

まとめ

垂直統合は、企業が競争力を高めるための重要な戦略の一つです。しかし、そのメリットとデメリットを十分に理解した上で、自社の状況や市場環境に合わせて慎重に検討する必要があります。

もう一度検索