垣内惟聡

垣内惟聡の生涯

垣内惟聡（かきうち いそう）は、幕末の紀州で知られる豪商です。文化元年（1804年）に、栖原垣内家の本家の第11代目として生まれました。父の名前は垣内淡斎（孝友）で、彼は大坂の安治川沿いに店舗「河内屋松三郎」を構え、醤油の販売を行っていました。父が存命の時、店の運営は義兄に譲られましたが、彼は死の間際まで急逝することを気に留めず、自らの愛好する高砂の謡を楽しんでいたと言われています。

知識と継承

惟聡は兄の垣内玄蔵の養子となり、その後、本家を引き継ぐことになります。豪邸を大坂東堀に構え、華やかな生活を送ることになりましたが、贅沢な生活スタイルが家業に影を落とします。彼は江戸本店の番頭、松田佐七から度々節約を促されましたが、その助言には耳を傾けませんでした。天保の改革によって経済状況が悪化し、物価が低迷すると彼の経営はさらに困難を極め、最終的には豪邸を手放す結果となりました。それでも浪費癖はなかなか改善されず、財政第2の窮状から脱却できずにいました。

漁業への挑戦

ある夜、彼は浜辺で漁の様子を見て、新たに漁業に参入する決意を抱きました。大きな船を建造し、巨大な網を作り、職人を集めて大規模な漁業を行ったのですが、利益が上がらずたった半年で巨額の損失を出してしまいます。それでも彼は親族からの非難を一蹴し、「あなたたちは幸運だ。小さな成功に満足しているが、私の志を理解しない。」と軽蔑の視線を浴びせました。

隠居生活

その後、彼は病にかかり歩行が難しくなると、江戸近海の漁業不振も重なり商売は悪化の一途を辿りました。そのため財務状況はさらに厳しくなり、商業的な不振の影響で深川の本店は経済的に行き詰まることとなります。番頭の左七は息子の弥吉に店を譲ることになりますが、惟聡は倹約を求められ続けました。そして、遂には栖原賽神山の麓に小屋を構え、隠居生活を送ることに。ここでは日々の生活を見直し、先祖の遺稿整理や家業の歴史を記録し時折、大声で謡曲を詠んでいたと言います。

最期と遺族

安政5年12月16日（1859年1月19日）に惟聡は病により亡くなります。彼の冥福を祈り、烱遠という諡号が与えられました。彼の後を継いだのは兄の孫に当たる菊池晩香です。安政6年（1859年）10月には施無畏寺に彼の墓が建立されました。

家族と家系

垣内惟聡は、天文21年（1552年）に設立された栖原垣内家に生まれました。彼の父である垣内淡斎（孝友）は、本家の第9代目にあたる垣内忠質の弟にあたります。母は安永4年（1775年）生まれの孝で、剃髪し孝寿と名乗っていましたが、安政2年（1855年）に亡くなっています。兄の垣内玄蔵（広敬）や、姉の鶴がいるものの、惟聡自身は一生独身でした。このように、豪商としての人生を送った惟聡は、豪遊に明け暮れながらも、家業の維持に力尽きた一人の商人でした。

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