垣田高夫

垣田高夫は、1928年2月23日にこの世に生を受け、日本の数学界で重要な足跡を残しました。特に偏微分方程式論および関数解析学を専門分野とし、これらの理論の探求と普及に生涯を捧げました。学位は理学博士です。早稲田大学の教員として長年にわたり教鞭を執り、後進の育成にも力を注ぎました。

経歴

垣田氏は1928年（昭和3年）、岐阜県で誕生しました。学びの道を究め、1952年（昭和27年）には東京文理科大学の数学科を卒業しました。その後、早稲田大学理工学部に迎えられ、教授として数理科学の研究と教育に従事しました。熱心な指導と精力的な研究活動を続け、1999年に早稲田大学を定年により退職。長年の教育・研究における功績が称えられ、同大学の名誉教授の称号を授与されました。早稲田大学での最後の講義は、「カンタンの枕」と題されていました。

主な業績と教育活動

垣田氏の研究は、偏微分方程式論や関数解析学といった、現代数学の中でも特に応用範囲の広い分野に焦点を当てていました。これらの分野は、物理現象の記述や工学的な問題解決において不可欠なツールを提供します。大学における専門教育に加え、垣田氏は多くの数学関連書籍の執筆や翻訳を通じて、自身の専門知識を広く共有することにも情熱を注ぎました。専門家向けの高度な内容から、これから数学を深く学ぼうとする人向けの入門書まで、その著作は多岐にわたります。彼の分かりやすい解説は、多くの学生や研究者にとって、難解な数学の概念を理解するための助けとなりました。

著作

教育者としての垣田高夫氏は、数多くの教科書や専門書、翻訳書を刊行し、日本の数学教育の発展に貢献しました。主な著作を以下にリストします。

単著

『シュワルツ超関数入門』（日本評論社、日評数学選書、1985年8月）
1999年10月には新装版も刊行されています。
『フーリエ解析と超関数』（日本評論社、現代応用数学の基礎、1994年5月）
『ルベーグ積分しょーと・こーす』（日本評論社、1995年5月）
『微分方程式』（裳華房、応用解析セミナー、1996年11月）

共著・編著

『数学模範答案の書き方』（市田朝次郎との共著、三省堂、1957年）
『常微分方程式』（入江昭二との共著、内田老鶴圃新社、応用解析の基礎 3、1974年）
『フーリェの方法』（入江昭二との共著、内田老鶴圃新社、応用解析の基礎 4、1974年）
『複素関数論』（入江昭二との共著、内田老鶴圃新社、応用解析の基礎 2、1981年6月）
『ベクトル解析から流体へ』（柴田良弘との共著、日本評論社、2007年7月）

翻訳

『幾何学の基礎』（パガレロフ著、本庄昭三・藤沢祐治との共訳、内田老鶴圃新社、第3版、1975年）
『微分方程式で数学モデルを作ろう』（デヴィッド・バージェス、モラグ・ボリー著、大町比佐栄との共訳、日本評論社、1990年4月）
『非ヨーロッパ起源の数学　もう一つの数学史』（ジョージ・G・ジョーゼフ著、大町比佐栄との共訳、講談社、ブルーバックス、1996年5月）
『オックスフォード数学ミニ辞典』（マイケル・ウォードル著、笠原晧司との共訳、講談社、ブルーバックス、1997年5月）

受賞

長年にわたる学術研究と教育への顕著な貢献が評価され、2015年春の叙勲において瑞宝中綬章を受章しました。

晩年と逝去

垣田高夫氏は、2018年10月11日に90歳でその生涯を閉じました。偏微分方程式論や関数解析学といった専門分野における研究とともに、多くの著作や翻訳を通じて数学の普及と発展に尽力した功績は、日本の数学界において今なお記憶されています。

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