城山貝塚

城山貝塚：縄文時代の記憶を伝える遺跡

徳島県徳島市徳島町城内、現在の徳島中央公園内に位置する城山貝塚は、縄文時代後期から弥生時代前期（紀元前1500年～紀元前500年頃）にかけての複合遺跡です。この遺跡は、当時の人々の生活様式や環境を知る上で重要な手がかりを提供しており、とくしま市民遺産にも選定されています。

遺跡の概要

城山貝塚からは、1号貝塚、2号貝塚、3号貝塚、4号遺跡、5号貝塚（ただし4号には貝塚はない）が発見されました。現在では1号から3号の貝塚が現存しており、城山の東麓から南東麓にかけて、2号、3号、1号の順に分布しています。これらの貝塚は1963年（昭和38年）に徳島市の指定史跡となりました。いずれの貝塚も、貝層の厚さは30～10センチメートル程度で、鹹水産のハイガイが主な貝種として大量に出土しています。また、縄文土器も多数発見されており、岩陰や洞窟を利用した住居跡であったと考えられています。

発見と発掘の歴史

城山貝塚の発見は、1922年（大正11年）に徳島市出身の考古学者、鳥居龍蔵による調査がきっかけでした。鳥居は県下の貝塚調査中に、城山山麓に貝殻が出土するという情報を得て、発掘調査を開始し、1号貝塚を発見しました。その後、すぐに2号以降の貝塚も発見されています。鳥居は東京帝国大学の助教授であったため、調査は一時中断されましたが、井上達三、岩佐紀貞、前田寓波、田所眉東、森敬介ら現地スタッフによって発掘が続けられました。

各遺跡の詳細

1号貝塚

1号貝塚は岩陰の下に位置し、ハマグリ、アサリ、カキ、ハイガイなどの貝類が約60センチメートルの厚さで堆積しています。縄文時代後期の土器も多数出土しており、岩陰を利用した住居跡と考えられています。年代は縄文時代後期中期（紀元前1500年頃）と推定されています。

主な出土品：縄文土器片、ハマグリ、アサリ、カキ、ハイガイ

2号貝塚

2号貝塚も1号貝塚と同様に岩陰の下に形成されており、ハマグリ、カキ、ハイガイなどの貝類が約1メートルの厚さで堆積しています。獣や鳥、魚の骨、縄文時代後期の土器片のほか、ほぼ完全な屈葬状態の人骨1体を含む、3体分の人骨も出土しています。こちらも岩陰を利用した住居跡と考えられています。年代は縄文時代後期中期（紀元前1500年頃）と推定されています。

主な出土品：縄文土器片、獣骨、魚骨、人骨、ハマグリ、カキ、ハイガイ

3号貝塚

3号貝塚は洞窟の中と入り口で発見され、ハマグリやカキ、バイ、カガミガイなどの貝類が30～60センチメートルの厚さで堆積しています。縄文時代後期から晩期の土器、弥生時代の壺も出土しており、年代は縄文時代後期末～晩期（紀元前1200年～前500年頃）と推定されています。

主な出土品：縄文土器片、弥生土器片、ハマグリ、カキ、バイ、カガミガイ

4号遺跡

4号遺跡は2号と3号の間に位置していましたが、現在では詳細な位置が不明です。縄文時代から弥生時代の土器が多数出土していますが、貝塚は形成されていませんでした。

主な出土品：縄文土器片、弥生土器片

5号貝塚

5号貝塚は北側の頂上部にありましたが、現在では所在が不明です。ハマグリ、アサリ、カキ、サザエ、シジミなどの貝類に混じって弥生時代の土器が出土しており、竪穴建物が存在したと考えられています。

主な出土品：弥生土器片、ハマグリ、アサリ、カキ、サザエ、シジミ

アクセス

JR高徳線徳島駅より徒歩10分
徳島市営バス「公園北口」停留所より徒歩2分

まとめ

城山貝塚は、徳島市の中心部に位置しながらも、縄文時代から弥生時代にかけての貴重な遺構を今に伝える遺跡です。出土品は東京大学総合研究博物館に保管されており、一部は市内の鳥居龍蔵記念博物館で展示されています。都市部で古代の遺跡を手軽に観察できる貴重な場所として、多くの人々に親しまれています。

関連情報

徳島県立鳥居龍蔵記念博物館
特集「鳥居龍蔵と城山貝塚調査」にあたって（徳島県立鳥居龍蔵記念博物館報告） (PDF)
井上達三『国津神時代ニ於ケル徳島城山遺跡地』解題（徳島県立鳥居龍蔵記念博物館報告） (PDF)
* 城山貝塚 yahoo

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