基幹技能者

基幹技能者（きかんぎのうしゃ）

基幹技能者とは、日本の建設工事現場において、施工管理を行う技術者と実際に作業にあたる技能者との連携を円滑に進める中心的な役割を担う、高度な能力を持つ技能者を指します。これは、国土交通省が建設現場全体の生産性向上などを目指して提唱し、各建設専門工事業界の団体などが主体となって能力を認定する民間の資格制度によって認定された者を言います。

この制度は、建設業の多岐にわたる職種に対応しており、認定を行う団体や専門分野によって様々な名称の基幹技能者が存在します。例えば、電気工事、橋梁、造園、コンクリート圧送、防水、トンネル、建設塗装、左官、鉄筋、型枠、配管、鳶・土工、内装仕上工事など、多数の分野で認定が行われています。制度導入当初（2007年3月31日時点）は19職種26団体で合計22,754名が認定されていましたが、制度の発展とともに認定者数は増加しています。

基幹技能者に求められる能力は多岐にわたりますが、一般的には、担当する専門工事において10年以上の実務経験を持つ熟練の技能者や、現場の作業員を束ねる職長としての豊富な経験が求められることが多く、これらの経験を有する者が所定の講習を修了することで認定が得られます。彼らの主な役割は、担当する専門工事の施工計画を理解し、安全管理や品質管理、工程管理など、技術的な側面から現場作業員を指導・管理することです。また、施工管理技士や主任技術者といった管理者と、現場の作業員との間の密な連絡・調整を行うことで、管理者が技術的な検討や書類作成といった業務に集中できる環境を作り出し、結果として現場全体の効率と生産性の向上に大きく寄与することが期待されています。このように、基幹技能者は現場の最前線で技術と技能を橋渡しする、上級の職長としての側面が強いと言えます。

制度導入当初は、認定者の全国的な分布が十分でなかったことや、特定の工事現場への基幹技能者の常駐や配置を義務付ける規定がなかったことから、その存在意義や活用方法について課題も指摘されていました。

こうした状況を踏まえ、基幹技能者の現場における位置づけを明確にし、さらなる普及と活用を図るため、2008年1月31日の建設業法施行規則の改正により、「登録基幹技能者講習」という新たな制度が創設されました。この改正により、2008年4月1日以降に国土交通省に登録された機関が実施する基幹技能者講習を修了した者は、「登録基幹技能者講習修了者」として位置づけられることとなりました。

登録基幹技能者講習修了者であることは、建設業者が公共工事などを請け負う際に企業の技術力を評価する指標となる「経営事項審査」において、技術者として評価され、加点の対象となります。この加点点数は、技能検定の1級合格者や2級建築施工管理技士などの資格と比較しても高い評価（3点）が与えられており、登録基幹技能者の企業経営における重要性が高まったと言えます。講習修了証の様式も定められ、経営事項審査における証明資料として活用されています。なお、登録制度開始以前に基幹技能者として認定された者についても、一定の実務経験を経た上で特例講習を受けることにより、登録基幹技能者となる道が開かれています。

これらの取り組みにより、登録基幹技能者の数は着実に増加しており、2021年3月31日現在では、特例移行者を含め合計74,595名が登録基幹技能者として認定されています。これは、建設業界全体として、現場の技能者を単なる作業員としてだけでなく、高度な技術力とマネジメント能力を兼ね備えた人材として育成・評価していこうという流れが強まっていることを示しています。

基幹技能者は、建設キャリアアップシステムなどの建設業界全体の変革とも連携し、建設現場の品質・安全性の向上、生産性の向上、そしてそこで働く人々の処遇改善に不可欠な存在として、今後ますますその役割と重要性が高まっていくと考えられます。

関連項目

建設業振興基金
建設キャリアアップシステム
* 技能検定

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