基底膜

基底膜は、動物の組織において上皮細胞層と間質細胞層の境界に存在する、薄い膜状の細胞外マトリックスです。細胞と細胞外環境を隔てる役割を果たし、組織の構造と機能を維持するために不可欠な要素です。生体膜とは異なり、脂質を含まず、主にタンパク質と多糖類で構成されています。

基底膜は、細胞側から順に透明板、緻密板、線維細網板という3つの層から成ります。これらの層はそれぞれ異なる成分と機能を持っており、基底膜全体の構造を形成しています。

構成成分

基底膜の主要な構成成分としては、以下のものが挙げられます。

IV型コラーゲン: 基底膜の主要な構造タンパク質であり、網目状の構造を形成し、基底膜の強度と柔軟性を担っています。
ラミニン: 細胞接着を促進する糖タンパク質で、細胞表面の受容体と結合し、細胞と基底膜との相互作用を仲介します。また、細胞の移動、増殖、分化など、様々な細胞機能の調節にも関与します。
ヘパラン硫酸プロテオグリカン（パールカン）: 多糖類であるヘパラン硫酸とタンパク質が結合した複合体で、基底膜の構造を安定化し、細胞の増殖や移動を調節します。
エンタクチン（ニドゲン）: ラミニンやIV型コラーゲンなどの他の基底膜成分と結合し、基底膜全体の構造を安定化します。分子量の大きな糖タンパク質です。

研究と利用

基底膜の研究には、基底膜成分を多量に合成するマウスEHS腫瘍が利用されてきました。現在でも、この腫瘍から抽出されたマトリゲルなどの基底膜複合体が、細胞培養の基質や支持材料として広く利用されています。マトリゲルは、細胞の接着、成長、分化をサポートする機能を有しており、細胞培養だけでなく、再生医療の研究にも応用されています。

多様性

生体内の基底膜は、組織や場所によって成分が異なり、機能も多様です。例えば、血管の基底膜は血液の濾過に関与し、腎臓の糸球体基底膜は、血液中の老廃物を濾過するフィルターとして機能しています。このように、基底膜は組織の特性に合わせて多様な機能を発揮しています。

まとめ

基底膜は、細胞と細胞外環境の境界に位置し、組織の構造維持、細胞接着、分化、成長など、様々な生命現象に関わる重要な細胞外マトリックスです。その複雑な組成と多様な機能は、生物学的に重要な研究テーマであり、再生医療への応用も期待されています。

参考資料
* 基底膜 - 脳科学辞典

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