基礎物理学ブレイクスルー賞

基礎物理学ブレークスルー賞について

基礎物理学ブレークスルー賞（Breakthrough Prize in Fundamental Physics）は、現代物理学の根幹に関わる研究分野で目覚ましい功績を挙げた研究者を顕彰する、国際的に権威ある学術賞です。この賞は、ブレイクスルー賞という幅広い科学分野を対象とする賞シリーズの一部門として位置づけられています。2012年7月、ロシア出身の物理学者であり、インターネット関連事業で成功を収めたユーリ・ミルナー氏によって設立された非営利組織「基礎物理学賞財団（Fundamental Physics Prize Foundation, FFP）」が運営しており、毎年授与が行われています。設立当初は基礎物理学賞という名称で知られていました。

高額な賞金とその影響

この賞の最も注目すべき特徴の一つは、その破格ともいえる賞金額です。主要な賞である基礎物理学ブレークスルー賞の受賞者には、300万ドル（2018年9月時点）が贈られます。これは、ノーベル賞の賞金と比較しても2倍以上の金額に相当します。この巨額の賞金により、基礎物理学ブレークスルー賞は、2018年9月現在、世界で最も賞金額が高い学術賞となっています。その経済的なインセンティブの大きさから、一部のメディアからは「21世紀のノーベル賞」と形容されることもあり、基礎研究への関心を高め、研究者のモチベーション向上に貢献しています。

厳選された対象分野と候補者選考

本賞が表彰の対象とするのは、あくまで「基礎物理学」における純粋な学術的業績です。これは、例えばノーベル物理学賞が時に工学的な応用や発明なども対象とすることがある点とは異なり、自然界の根源的な法則や現象の理解を深めることに貢献した研究に焦点を当てていることを意味します。受賞候補者の指名については、基礎物理学賞財団の公式ウェブサイトを通じて、研究者や一般の人々を含む誰でも行うことができる開かれた制度を採用しています。

Physics Frontiers Prize

基礎物理学ブレークスルー賞に関連する賞として、「Physics Frontiers Prize」があります。この賞は、基礎物理学ブレークスルー賞の最終候補者群、いわば「物理学の最前線を切り拓く研究者たち」の中から選ばれます。Physics Frontiers Prizeを受賞した研究者のうち、その年の基礎物理学ブレークスルー賞を最終的に授与されなかった方々には、2013年時点では30万ドルの報奨金が与えられます。さらに、これらの研究者は、その後5年間、自動的に基礎物理学ブレークスルー賞の候補者として再指名されるという優遇措置が設けられています。これは、惜しくも大賞を逃したものの、その業績が高く評価されるべき研究者を支援し、継続的な研究活動を奨励するための制度と言えます。

特別賞の創設

毎年の定例賞とは別に、顕著な科学的ブレークスルーや長年にわたる貢献など、驚異的な科学的成果が認められた場合には、「特別賞（Special Breakthrough Prize）」が授与されることがあります。この特別賞は、特定の年の発見に限定されず、その重要性が認められればいつでも授与される可能性があります。こちらも基礎物理学ブレークスルー賞と同額の300万ドルという高額な賞金が贈られます。2018年現在までに、この特別賞は合計で6回（2013年に2回、その後2016年、2018年、2019年、2021年に各1回）授与されており、物理学史に残るような画期的な業績が対象となっています。

物理学ニューホライズン賞

また、基礎物理学ブレークスルー賞は、将来有望な若手研究者を支援するための「物理学ニューホライズン賞（New Horizons in Physics Prize）」も設けています。この賞は、物理学の分野で新たな地平線を切り拓こうとしている若い世代の研究者を奨励することを目的としており、受賞者には10万ドルが贈られます。これは、次世代の物理学を担う才能を発掘し、彼らがさらに飛躍するための助けとなることを期待されています。

まとめ

基礎物理学ブレークスルー賞は、その高額な賞金と基礎研究への特化という特徴により、設立から短期間のうちに世界的な学術賞としての地位を確立しました。主要な賞に加え、Physics Frontiers Prize、特別賞、物理学ニューホライズン賞といった関連賞を通じて、様々な段階の物理学者を支援し、物理学全体の発展に貢献しています。ノーベル賞と比較されるほどの注目度を持ち、今後の基礎物理学研究の進展に大きな影響を与え続ける賞と言えるでしょう。

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