埼玉県警察RATS
埼玉県警察機動戦術部隊RATS（Riot And Tactics Squad）は、埼玉県警察の機動隊に編成された銃器対策部隊です。RATSは、テロ対策や銃器を使用した凶悪犯罪者への対処を主な任務としています。
埼玉県警察は、南関東1都3県の警察本部の中で唯一SAT（特殊急襲部隊）が編成されていませんでした。しかし、県内には多くの重要施設が存在するため、テロなどの事案に対応するため、独自の能力を整備する必要性が高まりました。これを受けて、機動隊内にRATSが編成されました。
当初は機動隊第3中隊に設置されていましたが、後に第1中隊へと編成替えが行われました。
RATSの特徴は、一般的な銃器対策部隊とは異なる装備と訓練内容です。例えば、機関けん銃（MP5F）は全国的に配備されていますが、RATSではハンドガードがシュアファイアM63に換装され、X400フラッシュライト、M620Vスカウトライト、M900VバーチカルフォアグリップLEDウェポンライト、タンゴダウン・バーチカルグリップロングモデルなどが装着されています。
照準器としては、EO Tech社製のホロサイト552やエイムポイントのダットサイトM3、CQBコンバット・ライフルスコープとミニダットサイトの組み合わせなどが使用されています。これらの照準器を装着するマウントも、一般的なハイマウントだけでなく、より正確な照準が可能なローマウントも採用されています。ローマウント使用時には、ヘルメットの防弾面との干渉を避けるため、湾曲したブルガー&トーメ社製の銃床が装備されています。
突入時に先頭と2番目を担当する隊員は、MP5の代わりにH&K P2000拳銃を携行しています。この拳銃も、タクティカルマウントにダットサイトやタクティカルライトが装着された「狙撃拳銃」仕様となっています。他の隊員はS&W M3913を携行し、WRSタクティカルホルスターに収納しています。
隊員が携行する防弾盾は特注品であり、右側を斜めに切り取ることで、盾を携行した状態でも正面を視認しやすくなっています。2016年の警備部長査閲では、防弾盾3枚で構成されたタイヤ付きの移動式防弾システムも披露されました。
2008年に埼玉県川越市で発生した立てこもり事件では、RATSが高圧放水器を装備して出動したことが確認されています。
服制も独自で、一般的な特殊防弾衣ではなく、PALSに対応したプレート型防弾衣を着用しています。出動服（ラペリング用）の右上腕部には「RATS」と記載された赤色のワッペンが装着されています。
埼玉県は東西に長く、地形も多様であるため、RATSはヘリボーンによる展開能力を重視しています。2007年の治安出動訓練で初めて公に姿を現した際には、ラペリングを披露しました。2016年の警備部長査閲では、室内でのファストロープ降下も披露しています。
元隊員の田村忠嗣氏は、アメリカのSWATやFBI-HRTの訓練、自衛隊との共同訓練などを通じて、様々な部隊と交流・研鑽を積んだと語っています。また、元隊員の三森一輝氏は、陸上自衛隊のレンジャー養成訓練にも参加したと述べています。
2007年2月20日、陸上自衛隊朝霞駐屯地で行われた第1師団と埼玉県警察、茨城県警察による合同治安出動訓練で、RATSの存在が一般に明らかになりました。この訓練では、陸上自衛隊のヘリコプター（UH-1J）からラペリングを実施しました。
2008年6月3日、埼玉県川越市で発生した強盗犯人による立てこもり事件に出動しました。警察とのカーチェイスの末に包囲され、拳銃を所持して車内に立てこもった犯人の身柄を確保しました。犯人は自らの放った銃弾により死亡しました。
2009年1月12日、栃木県足利市で発生した拳銃使用の殺人未遂事件では、RATSはSTSおよび栃木県警察のSITと合同で、犯人が潜伏していた埼玉県上尾市内の駐車場に強行突入し、犯人を確保しました。犯人はトラックの寝台で眠っていたと報道されています。
漫画
『S -最後の警官-』
劇中では経験不足と指揮の乱れから成果を挙げることができず、警視庁のSATに指揮権を委ねる描写となっています。
有村拓真「機動隊の力」『特殊部隊SAT』イカロス出版〈イカロス・ムック〉、2021年、86-97頁。ISBN 978-4802209564。
大塚正論「埼玉県警察本部警備部 機動隊銃器対策部隊 警備部長査閲」『ストライク アンド タクティカルマガジン』、KAMADO、12-13頁、2016年7月。
SATマガジン出版 編「日本の特殊部隊・番外編」『ストライクアンドタクティカルマガジン』、SATマガジン出版、13-23頁、2017年5月。NCID BB01834038。
ストライクアンドタクティカルマガジン 編『日本の特殊部隊』2017年3月。ASIN B01N5XYKF6。
山崎准; 伊藤俊之 編『日本の警察力』宝島社、2016年。ISBN 978-4-8002-5424-5。
特殊部隊
機動隊
ウィキメディア・コモンズには、埼玉県警察RATSに関するカテゴリがあります。)
市街地テロ想定し実弾訓練 埼玉県警が公開 - YouTube (KyodoNews, 2016年3月19日公開)
編成
埼玉県警察は、南関東1都3県の警察本部の中で唯一SAT（特殊急襲部隊）が編成されていませんでした。しかし、県内には多くの重要施設が存在するため、テロなどの事案に対応するため、独自の能力を整備する必要性が高まりました。これを受けて、機動隊内にRATSが編成されました。
当初は機動隊第3中隊に設置されていましたが、後に第1中隊へと編成替えが行われました。
RATSの特徴は、一般的な銃器対策部隊とは異なる装備と訓練内容です。例えば、機関けん銃（MP5F）は全国的に配備されていますが、RATSではハンドガードがシュアファイアM63に換装され、X400フラッシュライト、M620Vスカウトライト、M900VバーチカルフォアグリップLEDウェポンライト、タンゴダウン・バーチカルグリップロングモデルなどが装着されています。
照準器としては、EO Tech社製のホロサイト552やエイムポイントのダットサイトM3、CQBコンバット・ライフルスコープとミニダットサイトの組み合わせなどが使用されています。これらの照準器を装着するマウントも、一般的なハイマウントだけでなく、より正確な照準が可能なローマウントも採用されています。ローマウント使用時には、ヘルメットの防弾面との干渉を避けるため、湾曲したブルガー&トーメ社製の銃床が装備されています。
突入時に先頭と2番目を担当する隊員は、MP5の代わりにH&K P2000拳銃を携行しています。この拳銃も、タクティカルマウントにダットサイトやタクティカルライトが装着された「狙撃拳銃」仕様となっています。他の隊員はS&W M3913を携行し、WRSタクティカルホルスターに収納しています。
隊員が携行する防弾盾は特注品であり、右側を斜めに切り取ることで、盾を携行した状態でも正面を視認しやすくなっています。2016年の警備部長査閲では、防弾盾3枚で構成されたタイヤ付きの移動式防弾システムも披露されました。
2008年に埼玉県川越市で発生した立てこもり事件では、RATSが高圧放水器を装備して出動したことが確認されています。
服制も独自で、一般的な特殊防弾衣ではなく、PALSに対応したプレート型防弾衣を着用しています。出動服（ラペリング用）の右上腕部には「RATS」と記載された赤色のワッペンが装着されています。
埼玉県は東西に長く、地形も多様であるため、RATSはヘリボーンによる展開能力を重視しています。2007年の治安出動訓練で初めて公に姿を現した際には、ラペリングを披露しました。2016年の警備部長査閲では、室内でのファストロープ降下も披露しています。
元隊員の田村忠嗣氏は、アメリカのSWATやFBI-HRTの訓練、自衛隊との共同訓練などを通じて、様々な部隊と交流・研鑽を積んだと語っています。また、元隊員の三森一輝氏は、陸上自衛隊のレンジャー養成訓練にも参加したと述べています。
活動史
2007年2月20日、陸上自衛隊朝霞駐屯地で行われた第1師団と埼玉県警察、茨城県警察による合同治安出動訓練で、RATSの存在が一般に明らかになりました。この訓練では、陸上自衛隊のヘリコプター（UH-1J）からラペリングを実施しました。
2008年6月3日、埼玉県川越市で発生した強盗犯人による立てこもり事件に出動しました。警察とのカーチェイスの末に包囲され、拳銃を所持して車内に立てこもった犯人の身柄を確保しました。犯人は自らの放った銃弾により死亡しました。
2009年1月12日、栃木県足利市で発生した拳銃使用の殺人未遂事件では、RATSはSTSおよび栃木県警察のSITと合同で、犯人が潜伏していた埼玉県上尾市内の駐車場に強行突入し、犯人を確保しました。犯人はトラックの寝台で眠っていたと報道されています。
登場作品
漫画
『S -最後の警官-』
劇中では経験不足と指揮の乱れから成果を挙げることができず、警視庁のSATに指揮権を委ねる描写となっています。
脚注
注釈
出典
参考文献
有村拓真「機動隊の力」『特殊部隊SAT』イカロス出版〈イカロス・ムック〉、2021年、86-97頁。ISBN 978-4802209564。
大塚正論「埼玉県警察本部警備部 機動隊銃器対策部隊 警備部長査閲」『ストライク アンド タクティカルマガジン』、KAMADO、12-13頁、2016年7月。
SATマガジン出版 編「日本の特殊部隊・番外編」『ストライクアンドタクティカルマガジン』、SATマガジン出版、13-23頁、2017年5月。NCID BB01834038。
ストライクアンドタクティカルマガジン 編『日本の特殊部隊』2017年3月。ASIN B01N5XYKF6。
山崎准; 伊藤俊之 編『日本の警察力』宝島社、2016年。ISBN 978-4-8002-5424-5。
関連項目
特殊部隊
機動隊
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、埼玉県警察RATSに関するカテゴリがあります。)
市街地テロ想定し実弾訓練 埼玉県警が公開 - YouTube (KyodoNews, 2016年3月19日公開)
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