堀口綾子

堀口 綾子

堀口 綾子（ほりぐち あやこ、1973年2月17日 - 1995年4月19日）は、埼玉県出身の日本のアイドル、モデル。

芸能界入りを志した背景には音楽活動への強い憧れがあったとされているが、キャリアの始まりは、当初「堀口 綾」（ほりぐち あや）名義でのグラビア活動だった。雑誌『熱烈投稿』（少年出版社）や『スーパー写真塾』（コアマガジン）といった媒体で、グラビアページや表紙を飾るモデルとして活動した。しかし、彼女自身はグラビア活動には必ずしも積極的ではなかったという。

その後、彼女は芸能事務所イエローキャブに所属する女性3人組グループ「みるく」に加入する。同グループはリーダーの染谷有紀子、そして星野貴代子とともに結成され、セクシー・グループとして注目を集めた。活動の大きな柱となったのは、日本テレビ系の人気バラエティー番組『スーパージョッキー』へのレギュラーアシスタントとしての出演である。番組での露出を通じてグループの知名度は上昇し、1994年にはCDをリリースして歌手としても活動を開始するなど、活動の幅を広げていった。

順調に見えたグループ活動だったが、転機が訪れる。1995年3月、「みるく」は『スーパージョッキー』を降板し、その後間もなく解散へと至った。グループ消滅後、堀口はかねてからの夢であった音楽活動の継続を模索し始める。親交のあった音楽家との共同作業や、海外での活動も視野に入れていたとされる。

しかし、こうした活動の方向性や将来のビジョンを巡って、所属事務所との間に軋轢が生じたと報じられている。思うように進まない状況、そして芸能活動の先行きが見えなくなったことが、彼女を深く追いつめていったのかもしれない。グループ解散からわずか1ヶ月余り後の同年4月19日、堀口綾子は自宅で自ら命を絶った。享年22歳というあまりにも早すぎる死だった。

彼女の人物像を語る上で欠かせないのが、サブカルチャー、特に音楽への造詣の深さである。生粋のサブカル愛好家であり、音楽活動に対する情熱は非常に強かった。小西康陽、電気グルーヴ、大槻ケンヂ、森若香織といった著名なアーティストが楽曲を提供していた細川ふみえを深く尊敬しており、グラビア嫌いだったにも関わらず細川と同じイエローキャブへの所属を選んだのは、そうした音楽的な繋がりへの期待もあったからだとも言われている。亡くなる直前まで「ロンドンでバンドをやりたい」と、海外での本格的な音楽活動という大きな夢を語っていたというエピソードも残っている。

また、バンド「突然段ボール」の熱狂的なファンであり、自身でミニコミ誌を制作・発行していたという一面も持っていた。根本敬が主宰する『幻の名盤解放同盟』といったアンダーグラウンドなサブカルイベントにも積極的に参加するなど、メジャーなアイドル活動の傍ら、独特のサブカルチャーシーンにも深く入り込んでいたことがうかがえる。

彼女の突然の死は、サブカルチャー界隈にも大きな衝撃を与えた。生前から親交のあった関係者やファンは彼女の早逝を惜しみ、1995年12月18日には渋谷クラブクアトロで追悼ライブが開催された。このライブには、森若香織や大槻ケンヂ、そして彼女が愛してやまなかった突然段ボールなど、縁の深いアーティストが集結し、故人を偲んだ。さらに、彼女が尊敬していた細川ふみえも、2003年に発表した自伝的小説『万華鏡』の中で、堀口綾子の死に言及している。

短い生涯ではあったが、アイドルとしての活動と、その裏にあったサブカルチャーへの深い愛、そして音楽への情熱は、関係者の心に強く刻まれている。その死は、芸能界の厳しさや、若き才能が直面する苦悩を改めて浮き彫りにする出来事となった。

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