堀江 (花街)

堀江（花街）

大阪市西区に位置していた「堀江」、あるいは「堀江新地」は、かつてこの地で栄えた花街です。

歴史

堀江が花街として発展した歴史は、江戸時代にまで遡ります。その始まりは、堀江川の近くにあった和光寺（通称：あみだ池）の門前に設けられたいくつかの茶店であったとされています。その後、この地域に相撲興行の小屋が設置されると、多くの人が集まるようになり、それに伴って茶店への客足も伸びました。さらに、周辺に材木関連の施設があったことも、人々の往来を活発にし、結果として花街としての賑わいを増していく要因となりました。

明治時代から大正、そして昭和初期にかけて、堀江の花街は最盛期を迎えます。当時の大阪には新町遊廓、南地、松島遊廓といった大きな遊廓がありましたが、堀江はこれらに次ぐ規模を誇るようになりました。記録によると、貸座敷（お茶屋）は175軒、抱える芸妓は500名、娼妓は81名にも達し、その規模からも堀江が大阪を代表する大規模な花街の一つであったことが伺えます。

こうした賑わいのさなか、1905年（明治38年）には、日本の花街史、さらには犯罪史においても特筆されるべき大量殺人事件が発生しました。これが「堀江六人斬り事件」です。この悲惨な事件の被害に遭いながらも、奇跡的に一命を取り止めた一人に、「山梅楼」という貸座敷の芸妓であった妻吉がいました。彼女は両腕を失うという想像を絶する苦難に直面しますが、その後、仏門に入り「大石順教」として知られるようになります。宗教家となった彼女は、自身の経験を乗り越え、福祉活動などに尽力し、多くの人々に希望を与え、その波乱に満ちた生涯は後世に語り継がれています。

第二次世界大戦中の大阪大空襲により、堀江の街もまた大きな被害を受けました。終戦後、街並みは再建されたものの、花街としての往時の賑わいは戻らず、次第に衰退していきました。そして昭和後期には、堀江の花街はその歴史に静かに幕を下ろしたと考えられています。

現在の堀江

花街として栄えた時代は終わりましたが、堀江の街は新たな姿へと変貌を遂げています。21世紀に入ると、堀江は「オレンジストリート」などを中心に、若者向けの洗練されたアパレルショップやカフェ、インテリアショップなどが数多く立ち並ぶエリアとして知られるようになりました。同時に、かつての花街の風情は薄れ、現代的な高層マンションの建設も進み、活気あふれる商業地・住宅地として、日々多くの人々が行き交う街へと生まれ変わっています。かつて賑わいを見せた花街の歴史は、街の記憶として静かに留められています。

もう一度検索