堀江佐吉

堀江佐吉の業績と影響

堀江佐吉（ほりえ さきち）は、弘化2年（1845年）に青森県弘前市で生まれた大工棟梁で、明治時代に多くの洋風建築を手がけました。佐吉は、祖父から続く弘前藩の御用大工に生まれ育ち、父も「お城大工」として知られる一家の出身です。

彼の建築のキャリアは、幼少期に近隣にその道の先駆者である棟梁・今常吉が洋風の個人邸宅を建設し始めたことに影響を受けます。佐吉は工事現場に足繁く通い、手腕を身につけました。35歳のとき、北海道に出稼ぎに出かけ、そこで洋風建築の街並みに感動。その後、自らも設計に挑むようになります。

1880年に弘前に戻った後、家族や弟子を連れて青森に居を構え、軍関連の施設建設に携わりました。特に、東奥義塾校舎の再建を手がけた際には、自身が設計した洋風建築を完成させ、名を広めました。

堀江は、1890年にも再び東奥義塾校舎の再建を請け負い、さらには大倉組からの依頼で屯田兵舎の建設を行うために再度北海道へ向かいます。そこでの働きが認められ、大倉喜八郎による慰労金を辞退し、技術者仲間に分け与える姿勢には、彼の人柄と職人としての誇りが表れています。

彼の生涯にわたる建築活動は決して一時的なものでなく、1896年には弘前城の石垣修復工事を行い、さらに五所川原の佐々木嘉太郎邸や第8師団司令部、第五十九銀行本店といった数々の重要な建物を手がけました。特に、1904年の第五十九銀行本店は今でも地元の重要文化財として親しまれています。

堀江佐吉は、1907年に旧弘前偕行社の起工を進めますが、その完成を見ることなく同年8月に亡くなりました。彼の葬儀には1000人以上が参列し、道順が変更されるほどの盛大なものでした。その後も彼の業績は評価され、1908年には「棟梁堀江佐吉翁記念碑」が建設されました。この高約7メートルの石碑には、工学博士による揮毫がされており、彼の功績を称える象徴となっています。

堀江の影響の下で育った弟子たちも、彼のように多くの建築物を残しており、その影響力は今も続いています。特に、旧弘前偕行社や旧津島家住宅など、多くの建物が現在でも重要文化財として残存しており、地域の観光資源ともなっています。彼の仕事が今日の弘前の建築シーンに与えた影響は計り知れません。

堀江佐吉の業績は、彼の技術的な革新にとどまらず、地元の文化の発展にも大きく寄与しました。彼が残した建築物は、青森の歴史と成長を象徴するものとして、今後も多くの人々に親しまれていくことでしょう。

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