堀江優

堀江優：聖書を題材に魂を描いた水彩画家

堀江優（ほりえ まさる、1933年 - 2013年1月）は、兵庫県神戸市に生まれた日本の水彩画家です。牧師の長男としてこの世に生を受けました。

教員から画家への転身

幼少の頃から美術への関心を抱いていましたが、1956年に神戸大学教育学部を卒業後、小学校教員として教鞭を執りました。しかし、絵を描くことへの情熱は消えることなく、趣味として絵画制作を続けていました。ある時、彼は「描ける時に描くべきだ」という助言を受け、それを機に本格的に絵画制作に取り組み始めます。その画題として選んだのは、幼い頃から慣れ親しんだ聖書でした。教員として子供たちの水彩画に触れる中で、水彩という画材に可能性を見出し、デッサンや下絵を一切用いない独自の技法で、水彩絵具を幾度も塗り重ねることで重厚な表現を生み出しました。

安井賞受賞と独自の画風

1979年、堀江は《ペテロ》という作品で、水彩画家として初めて安井賞を受賞しました。この受賞は、彼の画業における大きな転換点となり、水彩画の新たな可能性を世に示す出来事となりました。

彼の作品は、聖書の登場人物が持つ人間的な弱さや葛藤を、深い洞察力と卓越した技法で描き出しています。特に、水彩絵具を重ねることで生まれる独特の色彩と質感は、観る者を惹きつけ、深い感動を与えます。

晩年と遺作展

最晩年まで創作意欲は衰えることなく、自作の展覧会開催に向けて準備を進めていましたが、残念ながら2013年1月にこの世を去りました。生前、彼が企画していた展覧会は「遺作展」として、神戸市立小磯記念美術館で開催されました。この遺作展は、彼の生涯の集大成を広く世に知らしめる機会となり、多くの美術ファンに感動を与えました。

作品と著作

堀江優は、画家としてだけでなく、教育者としてもその才能を発揮しました。著書には、教育現場での実践記録や、美術教育に関する深い考察が記されています。主な著書には、『輝く人間の歌』（明治図書出版、1973年）、『美術＝描画の授業－共同制作 授業叢書 ７』（一茎書房、1977年）などがあります。

また、1998年には茨城県つくば美術館で、柳田昭との二人展「現代の水絵・二人展」を開催。画集や展覧会カタログも多数出版されています。

堀江優の足跡

堀江優は、その生涯を通して、水彩画の新たな表現の可能性を追求し続けました。彼の作品は、単なる絵画にとどまらず、人間の内面を深く見つめ、魂の叫びを描いた芸術として、今もなお多くの人々の心を捉えて離しません。彼の遺した数々の作品は、今後も多くの人々に感動とインスピレーションを与え続けるでしょう。

彼の作品に触れることは、人間の持つ弱さや葛藤、そしてその先にある希望を感じる旅でもあります。

参考資料

堀江優 著　輝く人間の歌　明治図書出版　1973年
堀江優 著　美術＝描画の授業－共同制作 授業叢書 ７ 図書　一茎書房 1977年7月
堀江優と柳田昭の世界 現代の水絵・二人展 カタログ　堀江優〔画〕，柳田昭〔画〕; 深谷治之編　茨城県つくば美術館 1998年
水彩画家 堀江優 遺作展 「人間の弱さ」を持つ聖書の人を描き続けて: 特別展　堀江優 [画],　神戸市立小磯記念美術館 編　神戸市立小磯記念美術館 2013年
神戸っ子’80　子供らと創る世界を支えに　堀江優　『神戸っ子』No.229(1980年5月)
神戸・画人14　堀江優　『神戸っ子』No.238(1981年2月)

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