堀田進 (微生物学者)

堀田 進（ほった すすむ）

日本の医学者、微生物学者。特に熱帯医学、ウイルス学の分野で顕著な業績を残し、長きにわたり神戸大学医学部教授を務めた。1918年9月26日、大阪府三島郡茨木町（現在の茨木市）に生まれ、2011年11月17日にその生涯を終えた。

経歴と研究

1942年、京都帝国大学医学部を卒業し、医師免許を取得。同大学の木村廉教授が主宰する微生物学講座に入局し、副手、助手を務めた。若き日の堀田はウイルス研究に没頭し、終戦間もない1943年には、デングウイルスの世界初の分離に成功するという歴史的な快挙を成し遂げた。この研究は、当時感染症として脅威となっていたデング熱の原因究明に大きく貢献するものであった。

第二次世界大戦後の1948年9月には京都帝国大学医学部講師に昇任。学制改革に伴い、1949年6月には京都大学医学部講師となった。同年8月には、自身の「デング熱の研究」により京都大学から医学博士号を授与された。堀田は学術振興にも積極的に取り組み、同年には現在の日本ウイルス学会の前身にあたる「ヴィールス談話会」の発足に参画し、その後の機関誌の発行にも貢献するなど、国内のウイルス研究者間の交流と発展に尽力した。

研究者としての視野を広げるため、1953年から1955年にかけてはアメリカ合衆国のワシントン大学へ留学。帰国後の1958年には同大学よりPh.D.を取得し、国際的な研究者としての地位を確立した。

大学教授として

1956年5月、京都大学医学部助教授に昇任。しかし、翌1957年には兵庫県立神戸医科大学教授に転任した。その後、大学の統合・改組を経て、1964年には新制の神戸大学医学部教授となった。神戸大学では、病原体研究、特に熱帯病のウイルスに関する研究・教育を主導した。また、国際協力にも熱心で、特に東南アジア、とりわけインドネシアとの活発な学術交流を推進し、日本の熱帯医学研究の国際的なプレゼンス向上に貢献した。

1982年に神戸大学を定年退官し名誉教授の称号を得た後も、教育・研究活動を続け、1985年から1989年までは金沢医科大学熱帯医学研究所長を務めた。さらに、1996年から2004年まで社団法人日本WHO協会の副会長を務めるなど、国際保健分野にも貢献し続けた。1992年には、長年にわたる医学研究と教育、そして国際貢献の功績が認められ、勲三等旭日中綬章を受章している。

家族と著作

家族としては、次男の堀田博氏も父と同じく微生物学者の道を歩み、神戸大学医学部教授、後に名誉教授を務めた。

主な著作には、デング熱などの熱帯ウイルスに関する英文単著『Research on arthropod-borne viruses with special reference to dengue and related tropical viruses』（1978年）や、神戸における医学の国際交流史を紐解いた『神戸の医学国際交流史：日本熱帯医学史の一断面』（1993年）、そして組織培養に関する共著『組織培養の基本と実際』（大山昭夫との共著、1963年、増補版1969年）などがある。

堀田進は、デングウイルスの世界初分離という画期的な業績を皮切りに、ウイルス学、特に熱帯医学の分野で多大な貢献を果たし、教育者としても多くの後進を育成した。その研究活動は、日本の感染症研究の歴史において重要な一頁を記している。

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