堪忍袋

堪忍袋（かんにんぶくろ）

概要

「堪忍袋」は落語の一演目で、益田太郎冠者が初代三遊亭圓左のために書き下ろした新作です。この演目には、東京の八代目桂文楽、三代目三遊亭金馬、五代目柳家小さん、十代目柳家小三治といった著名な演者が関わっています。近年では上方でも演じられるようになり、様々な形で親しまれています。

あらすじ

物語は、夫婦喧嘩が絶えない職人の男、熊五郎とその妻から始まります。二人は激しい言い争いを繰り広げ、近所に響き渡るほどの声を出します。そんな声を聞きつけた、熊五郎の出入り先の主人や長屋の大家がやってきて、彼らをなだめることにします。「堪忍五両、思案は十両」といった言葉を引用し、喧嘩をしていては金も貯まらないと警告します。

そして、主人が語る中国故事に耳を傾けることで、熊五郎は自身の不満を解消する方法を見出します。そこには、何があっても怒らない男の話があり、その男は大きな水がめを持つことで、自らのストレスを解消していたことが紹介されます。「堪忍袋」を用意して、その中にお互いの不満を叫んで吐き出すことが提案され、これによって夫婦が円満になると教えられます。

熊五郎はすぐに妻に袋を作らせ、自らの大声で不満を叫ぶことから始めます。「亭主を亭主と思わない、スベタアマーッ」と叫ぶ彼の一方で、妻も「この助平野郎ゥーッ」と袋に声を吹き込みます。不思議なことに、この叫びによって二人の怒りは徐々に消え、爽快感を得ることになります。

近隣の人もこの様子を見て、やがて話題が広まっていきます。熊五郎と妻の「堪忍袋」は、人々の興味を引くこととなり、長屋の前にはいつも人だかりができてしまいます。袋は不満や怒りで膨らみ、「どうすれば良いか？」という状態になります。最終的には、隣人や長屋の仲間たちが袋を求め、熊五郎たちは袋を安全に扱うためにどうするかを話し合うことになります。

夜、戸を叩く音と共に泥酔した仲間が転がり込み、彼の不満も袋にぶちまけたいと求めます。しかし袋はすでに満杯であることから、六が袋を強引にひったくると、緒が切れ、袋の中から「喧嘩」が飛び出してくるというシュールな結末が待っています。

バリエーション

この落語には、袋が満たされた後の展開が様々に変わることもあります。例えば、商家の嫁の叫びによって袋が破れてその声が姑に届くことで、姑が元気を取り戻すという結末や、主人公が長屋仲間を殴り倒すことで「堪忍袋の緒が切れた」と落ちをつけるものなど、多くのバリエーションが存在します。

まさに「堪忍袋」は、夫婦間の争いを仲裁し、笑いを誘う作品として、落語の中で特有の魅力を持っています。

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