塔上の奇術師

『塔上の奇術師』

江戸川乱歩の少年向け推理小説シリーズの一つ、『塔上の奇術師』は1958年に月刊娯楽雑誌「少女クラブ」に連載されました。この作品は、特に少女誌の読者を意識しており、主な登場人物である少女探偵の花崎マユミを中心に、彼女の友人である中学1年生の女の子たち、淡谷スコ子、森下トシ子、園田ヨシ子が物語を彩ります。彼女たちの探偵としての姿勢や友情が、物語の大きなテーマとなっています。

本作では、コウモリ男や赤い道化師、白い幽霊など、奇抜な造形の怪人が登場しますが、彼らの正体は序盤から怪人二十面相、または怪人四十面相として知られています。特に印象的なのは、怪人二十面相による計画的な犯罪活動の宣言や、時折行われる犯行予告のカウントダウンシーンです。この流れは、以前の作品「少年探偵団」にも見られるスタイルで、読者に緊張感を与えつつ興味を引きます。なお、今回の作品をもって「四十面相」という名称は使われなくなり、次作以降は「二十面相」という表記に統一されることになります。

あらすじ

物語は、花崎マユミが学友の淡谷スコ子と森下トシ子と共に古い洋館、時計屋敷を訪れることから始まります。この洋館には不気味な謎や奇妙な出来事が満ちており、3人はそこでコウモリのような怪人の目撃情報を得ます。それと同時に、淡谷家に怪人四十面相からの電話がかかり、彼が24個の宝石を奪うという衝撃的な予告が伝えられます。

この電話は、少女たちにとって大きな危機感をもたらし、彼女たちは事件の真相を解き明かすべく動き始めます。友人たちとの協力や各種の試練を通じて、彼女たちの成長が描かれ、友情と絆がさらに強まる様子が物語の魅力のひとつです。

江戸川乱歩の作品は常に独特な怪人が登場し、その描写は読者を魅了してやみません。『塔上の奇術師』も例外ではなく、登場人物たちの生き生きとした描写や、奇術的な事件の数々が織りなすストーリーは、当時の読者に大きなインパクトを与えました。また、本作品は、ミステリー小説としての醍醐味だけでなく、少女たちの勇気や知恵を通じた成長物語としても読み応えがあります。

このように、江戸川乱歩が描く『塔上の奇術師』は、推理小説と少女探偵ものの要素を巧みに組み合わせた快作であり、時代を超えた魅力を持つ作品です。

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