塚本快示

塚本快示：北宋の美を現代に伝える陶芸家

塚本快示（つかもと かいじ、1912年12月14日-1990年6月10日）は、日本の陶芸界にその名を刻む重要な人物です。岐阜県土岐市に生まれ、代々続く陶磁器製作の家に育ちました。本名は塚本快兒。

幼少期より陶芸に親しみ、1927年には父を助ける形で本格的に作陶を始めます。戦後、陶芸デザイナーとして名高い日根野作三に師事。クラフト風の磁器制作と並行して、中国陶磁、特に北宋時代の白磁、青白磁、そして影青（いんちん）と呼ばれる独特の青磁の研究に没頭しました。

その制作において、塚本は独自の方法を確立しました。各地から集めた長石や陶土を配合した素地、そして長石、陶石、カオリン、柞灰、石灰などを用いて調整した釉薬を使用。中でも、白磁胎がまだ乾ききらないうちに、鋼や竹のヘラを用いて刻まれる片切り模様は、彼の卓越した技術の証です。この精緻な技法は、他の追随を許さず、国内のみならず中国の陶磁界においても高く評価されています。

1948年頃、古陶磁研究家小山富士夫の『影青記』に感銘を受けた塚本は、より一層研鑽を積み、技術の精度を高めていきました。その高い評価は、数々の受賞歴からも明らかです。1961年には通商産業省のGマークに初入選、1963年には第10回日本伝統工芸展に入選。さらに、1964年のカリフォルニア博覧会では金賞を受賞するなど、国際的な舞台でもその才能を発揮しました。

国内の受賞歴も輝かしいものがあります。1965年には第12回日本伝統工芸展で日本工芸会会長賞を受賞。1967年にはモントリオール万博に出品するなど、国際的な活動も精力的に行っています。1973年には岐阜県重要無形文化財「青白磁」保持者に認定され、1977年には紫綬褒章を受章。1979年には日本陶磁協会賞、1980年には中日文化賞と、数々の栄誉に輝きました。

そして1983年、日本の陶芸家にとって最高の栄誉である人間国宝に認定されます。同年、重要無形文化財「白磁」「青白磁」保持者にも認定され、さらに土岐市名誉市民にも推挙されました。1984年には勲四等旭日小綬章を受章。これらの功績は、彼の陶芸に対する並々ならぬ情熱と、類まれな技術の高さを物語っています。

1990年6月10日、塚本快示は逝去しました。しかし、彼の開いた快山窯は、現在も長男である塚本満によって受け継がれ、塚本快示の技術と精神は、現代においても息づいています。彼の作品は、北宋時代の中国陶磁器への深い理解と、独自の技法を融合させた、比類なき美しさを誇ります。その作品群は、日本の陶芸史に、そして日本の文化遺産に、永遠に刻まれることでしょう。

年譜

1912年12月14日：岐阜県土岐市に生まれる
1927年：作陶開始
1961年：通商産業省Gマーク初入選
1963年：第10回日本伝統工芸展初入選
1964年：カリフォルニア博覧会金賞受賞
1965年：第12回日本伝統工芸展日本工芸会会長賞受賞
1967年：モントリオール万博出品
1973年：岐阜県重要無形文化財「青白磁」保持者認定
1977年：紫綬褒章受章
1979年：日本陶磁協会賞受賞
1980年：中日文化賞受賞
1983年：人間国宝認定、重要無形文化財「白磁」「青白磁」保持者認定、土岐市名誉市民推挙
1984年：勲四等旭日小綬章受章
1990年6月10日：逝去

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