塚本明里

塚本明里（つかもと あかり）は1990年2月17日生まれ、岐阜県可児市出身のモデル、タレントである。彼女は筋痛性脳脊髄炎、線維筋痛症、脳脊髄液減少症という三つの難病を抱えながら、主に岐阜県を拠点に多岐にわたる活動を展開している。特に筋痛性脳脊髄炎の患者会「笑顔の花びら集めたい」では代表を務め、疾患の正しい理解促進と啓発に力を注いでいる。

塚本氏の病との闘いは、岐阜県立東濃実業高校の二年生だった2006年5月に始まった。試験中に突然視界がぼやけ、激しい頭痛と高熱に襲われたが、当初は風邪と診断された。しかし、体調不良は続き、高校三年生の夏には全身を締め付けられるような耐え難い痛みに苦しむようになった。症状を訴えても「風邪のせい」などと言われ、診断までには多くの医師を訪ね歩くこととなった。そして2007年10月、16人目の医師によってようやく筋痛性脳脊髄炎と線維筋痛症の診断が下された。診断書を提出した高校は、彼女のために専用の学習室を用意し、自習による学習環境を整えた。その努力が実り、塚本氏は高校を卒業した。大学進学は叶ったものの、講義に出席できる健康状態にはなく、やむなく休学し、最終的には一度も通学することなく退学せざるを得なかった。2013年には再検査により脳脊髄液減少症も判明。2017年までに計5回のブラッドパッチ治療を受けるなど、病状の改善に向けた治療も続けている。

これらの経験から、塚本氏は疾患に対する社会の理解を深めることの重要性を強く認識し、啓発活動に積極的に取り組んでいる。2012年には、筋痛性脳脊髄炎の患者会「笑顔の花びら集めたい」を設立。「慢性疲労」という言葉のイメージから「休めば治る」といった誤解や偏見が多い現状を変えたいと訴え、疾患名の変更の必要性も提唱している。毎年5月12日の筋痛性脳脊髄炎世界啓発デーに合わせて啓発イベントを開催。世界的な啓発カラーである青色を用いた情報発信に加え、症状の疑似体験ブースの設置、青色の写真を使ったモザイクアート制作、自身の写真をラッピングしたトラックの運行など、独自の方法で注目を集めている。

メディアにも登場し、自身の症状や活動が広く取り上げられている。特に2019年には日本テレビの『ザ!世界仰天ニュース』で特集され、スタジオにも出演。これを機に多くの人々に彼女の存在と病気のことが知られることになった。同年には岐阜県ヘルプマーク普及啓発大使に任命され、県内各地での講演活動や岐阜大学でのゲスト講義を通じて、ヘルプマークの認知度向上と正しい理解の促進に貢献している。これらの疾患啓発やヘルプマーク普及への功績が認められ、2020年度には人権大賞を受賞した。さらに、地元の可児市では障がい者計画策定委員としても活動し、地域社会における障がい者支援の推進にも関わっている。

モデル・タレントとしてのキャリアも、病気と並行して築き上げられてきた。大学休学中に療養しながら応募した無料写真誌『岐阜美少女図鑑』のモデルに採用されたことが活動の始まりだった。その後ミスユニバースに挑戦し、『岐阜美少女図鑑』を卒業。2018年にはミス・ユニバース・ジャパンで岐阜WEB賞を受賞している。現在も広報誌などでモデル活動を続けている。

『岐阜美少女図鑑』の活動をきっかけに、岐阜市のまちづくり団体「ひとひとの会」代表の佐藤徳昭氏にスカウトされ、柳ヶ瀬商店街の非公式キャラクター「やなな」の広報を2011年4月から担当。やななをモデルにした小説の取材協力なども行った。やななの引退後は、「ひとひとの会」と佐藤氏が設立したタレント事務所「ラデッキ」に所属し、岐阜県を代表するご当地タレントとして活躍。可児市ふるさと広報大使や可児警察署一日署長など、地元の公的な役職も数多く務めた。また、地元にゆかりのある著名人として、2020年東京オリンピックの聖火ランナーにも選ばれている。2022年7月には所属事務所を卒業し、新たな一歩を踏み出した。プライベートでは、2023年11月22日に一般男性と入籍したことを公表している。

塚本明里氏の活動は、難病と診断され困難な状況に置かれても、社会との繋がりを持ち、自らの経験を発信することで他者の支援や社会の意識改革に貢献できることを示している。彼女の存在は、同じ病に苦しむ人々はもちろん、多くの人々に希望と勇気を与え続けている。

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