塩瀬村 (愛知県)

塩瀬村 (しおぜむら)

愛知県南設楽郡に位置していた塩瀬村（しおぜむら）は、明治時代に短期間存在した日本の地方自治体です。現在の愛知県新城市の領域の一部に相当するエリアでした。

地理

塩瀬村の村域は、その北側にそびえる御岳山の麓にあたる地域に広がっていました。特に地理的な特徴としては、村の近くを流れる巴川と島田川の二つの河川が合流する地点の周辺に位置していたことが挙げられます。これらの河川は地域の景観を形成し、また当時の村の生活や産業とも密接に関わっていたと考えられます。

歴史

近代の自治体としての塩瀬村は、1889年（明治22年）10月1日、日本全国で実施された町村制の施行に伴って発足しました。それまで存在していた塩瀬村という単一の地域が、そのまま村制を敷くこととなり、他の地域から分離・合併することなく独立した自治体となりました。この際、村内に細分化された大字（おおあざ）は編成されませんでした。

村の行政運営に関しては、近隣の村々と連携を取る形態が取られていました。塩瀬村は、布里村、一色村、只持村、そして愛郷村といった周辺の四つの村と共に、行政事務の一部を共同で処理するための組合村を結成していました。この組合村の役場は、構成村の一つである一色村に設置され、各村の代表者らが集まって村政に関する協議や決定を行っていたと考えられます。この組合村という形態の下で、塩瀬村は単独の自治体として約17年間存続しました。

しかし、明治時代後期に進められた市町村合併の流れの中で、塩瀬村も再編の対象となりました。1906年（明治39年）5月1日、塩瀬村は大規模な合併に参加することになります。この合併では、同じ南設楽郡に属していた鳳来寺村、布里村、一色村、只持村、愛郷村といった周辺の五つの村と共に、一つの新たな自治体を形成することになりました。この合併において、鳳来寺村が存続村となり、他の五つの村（塩瀬村を含む）がそこに編入される形が取られました。これにより、塩瀬村という独立した自治体はその歴史を閉じ、廃止されることとなりました。合併後、旧塩瀬村の領域は、存続した鳳来寺村の一部となり、「鳳来寺村塩瀬」という地名として引き継がれました。

地名の由来

「塩瀬」という地名の起源には、この地域で行われていた特定の産業が関係しているとされています。塩瀬とは、かつて日本で作られていた絹織物の一種で、特に厚手で光沢があるのが特徴です。この塩瀬という絹織物が、この地域で盛んに生産されていたことに由来して、村の名前がつけられたと考えられています。地域経済における絹織物生産の重要性がうかがえる由来です。

産業

塩瀬村の主な産業は農業でした。具体的な農業生産品に関する詳細な記録は限られていますが、地理的な条件、例えば河川の存在や山の麓という地形から、米作をはじめとする稲作や畑作などが中心であった可能性が高いと考えられます。村の経済活動は、地域の自然条件を生かした農業によって支えられていたと言えるでしょう。

現在

1906年の合併によって鳳来寺村の一部となった旧塩瀬村の地域は、その後の自治体合併を経て、現在は愛知県新城市の一部となっています。塩瀬という地名自体は、現在の新城市内の字名として残っている箇所も存在しており、地域の歴史を伝える名として受け継がれています。

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