塩見美喜子

塩見 美喜子（しおみ みきこ）

塩見美喜子氏は、1962年に愛知県名古屋市で生まれた、日本の分子生物学者です。現在は東京大学大学院理学系研究科で生物科学専攻の教授として教鞭を執り、生命現象の根幹に関わる研究を推進しています。

学びとキャリアの道のり

塩見氏の学問への探求は、愛知県立明和高等学校を卒業後、岐阜大学農学部農芸化学科で始まりました。1984年に同大学を卒業後、さらに京都大学大学院農学研究科へと進み、1988年に修士課程を修了しています。

その後、研究の舞台は海外へと移ります。1990年からはアメリカ合衆国のペンシルベニア大学ハワード・ヒューズ医学研究所にて研究補佐員として活動を開始。この時期に集中的な研究に取り組み、1994年には京都大学より論文博士として博士（農学）の学位を取得しました。博士論文のテーマは、脆弱X症候群の原因遺伝子産物の特性解明に関するものでした。

ペンシルベニア大学での研究員としての活動を続ける中で、1997年には科学技術振興事業団の若手研究者長期在外研究員に選ばれるなど、その才能は高く評価されていました。1999年からはペンシルベニア大学医学部生物物理学科で研究に携わりました。

国内での活躍と研究の進展

2000年に日本へ帰国後、徳島大学ゲノム機能研究センターで講師に着任しました。2001年には助教授、2007年には准教授へと昇任し、研究と教育における貢献を重ねます。この徳島大学在籍中の2003年には、脆弱X症候群関連タンパク質の機能修飾に関する研究成果で、徳島大学より論文博士として博士（医学）の学位を取得しました。

2008年には慶應義塾大学医学部の准教授に迎えられ、さらに研究活動を加速させます。そして、2009年には分子生物学における顕著な業績が認められ、優れた女性科学者に贈られる猿橋賞を受賞しました。この受賞は、特に遺伝子発現を制御する「RNAサイレンシング」の作用機序に関する画期的な研究成果に対して贈られたものです。

2012年からは現在の所属である東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻の教授に就任し、最先端の研究室を主宰しています。ここでは、ゲノム安定性の維持に重要な役割を果たすsmall RNAの一種である「piRNA」の生合成機構や機能に関する研究を中心に、生命の設計図である遺伝子情報がどのように制御・利用されるのかという根源的な問いに対する答えを探求しています。

受賞と社会的貢献

猿橋賞に加えて、塩見氏は2023年に内藤記念科学振興賞を受賞するなど、その研究成果は国内外で高く評価され続けています。

また、研究活動だけでなく、科学界全体の発展にも貢献しています。2014年には理化学研究所の研究不正再発防止のための改革委員会委員を務めるなど、科学研究の信頼性向上に向けた取り組みにも参加しています。

分子生物学の分野で世界をリードする研究を展開し、次世代の研究者育成にも情熱を注ぐ塩見美喜子氏の今後の活躍が期待されています。

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