塩飽聖遠

塩飽聖遠（しあく しょうえん/しょうおん）は、生年不詳ながら、鎌倉時代末期に活躍した武士です。北条氏得宗家の被官であり、御内人として仕えていました。通称を新左近入道といい、子に忠頼と四郎がいました。

元弘3年/正慶2年（1333年）、鎌倉幕府の滅亡が迫る中、聖遠は幕府方として鎌倉へ侵攻してきた新田義貞率いる反幕府勢力と戦いました。しかし、戦況は不利であり、幕府軍は敗北を喫します。

『太平記』によれば、聖遠は鎌倉の東勝寺において、北条一門と共に自刃して果てたとされています。その最期の場面は、特に悲劇的な物語として描かれています。

自刃の際、聖遠は嫡男である忠頼に、出家して生き延び、自身の弔いをしてくれるように促しました。しかし、忠頼は父の言葉を拒絶し、袖の下から抜いた刀で自害してしまいました。忠頼の弟である四郎もまた、兄の後を追おうとしましたが、聖遠はこれを制止します。

聖遠は辞世の漢詩を書き付けた後、四郎に自分の首を落とさせたと言われています。その辞世の句は以下の通りです。

「提持吹毛 截断虚空 大火聚裡 一道清風」

これは、「研ぎ澄まされた刀を手に持ち、虚空を切り裂く。燃え盛る炎の中で、一条の清らかな風が吹く」という意味合いで、死を前にしてもなお、武士としての誇りを失わず、潔く散る覚悟を示したものと言えるでしょう。

この出来事は、『太平記』（巻十 塩飽入道自害事）に詳しく記述されており、当時の武士道の精神や、滅亡に際しての悲壮な覚悟を伝えるものとして、後世に語り継がれています。

関連事項として、鎌倉の戦いや東勝寺合戦があり、これらの戦いの中で塩飽聖遠のような多くの武士が命を落とし、鎌倉幕府滅亡という歴史の転換期を迎えました。彼の最期は、その時代の武士の生き様を象徴する出来事の一つとして、深く記憶されるべきでしょう。

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