境川浪右衛門

境川 浪右衛門の生涯と業績

境川 浪右衛門、旧名宇田川 政吉は、1841年に千葉県市川市で生まれた大相撲の名力士です。彼は第14代横綱として知られ、相撲界に大きな足跡を残しました。浪右衛門の人生は、相撲に対する情熱と出世物語で彩られています。

幼少期と相撲への道

彼は製塩業を営む家の三男として生まれ、13歳の時、江戸の酒問屋「小西屋」に奉公に出ました。相撲が盛んな家庭環境で育った彼は、奉公先の主人のすすめで力士の道を歩み始めました。1857年11月に初土俵を踏み、四股名は「小西川」とされました。後に四方山と改名し、野心的な出世を目指しました。

台頭と昇進

浪右衛門は小柄ながらも尋常ならざる怪力と、豊かな技巧で相撲界に名を馳せました。1867年の新入幕を経て、1869年には大関に昇進。さらに「境川 大四郎」と改名し、翌場所には「境川 浪右衛門」と名乗ります。彼は1887年2月の横綱免許を受けましたが、天覧相撲の中止などによって、長い道のりを経て横綱としての栄光を手にしました。

幕内時代の戦績

彼が幕内時代に見せた取り口は特徴的でした。対戦相手に充分に力を発揮させる余裕を持ち、引き分けが非常に多かったことが印象的です。主な成績は通算118勝、23敗、71分、勝率は約0.837。他の名力士としばしば対戦し、鬼面山谷五郎には2勝1敗3分とほぼ均衡を保っていましたが、梅ヶ谷藤太郎にはなかなか勝利できず、相性の悪さもあったようです。

引退と指導者としての道

彼は1881年1月場所を最後に現役を引退し、その後は年寄・境川として弟子の指導を行いました。特に自らの弟子だけでなく、他の弟子にも公平に稽古をつけたことで、相撲界での評判は高く、「一ツ目の大名大関」「明治の谷風」と称されました。相撲長や取締編集人を歴任し、1885年の天覧相撲では角力長を務めました。彼は明治維新後の衰退期にあった相撲界を支えた功労者として評価されています。

晩年の困難

しかし、彼の人生は公私にわたる多くの問題にも直面しました。特に現役時代に起こった取組での負傷から頭痛が持病となり、それが晩年における健康状態に影響を与えました。また、家庭内のトラブルも多く、妻との不和や弟子による暴力事件が起こったことで、精神的負担が大きくなりました。これらの影響で酒量が増え、健康を害し、亡くなる原因となりました。

最期

1887年9月16日、浪右衛門は46歳でこの世を去りました。彼の死は、当時の相撲界にとって非常に大きな損失であり、その功績は今も語り継がれています。境川 浪右衛門の生涯は、相撲に対する情熱、成功、そして困難に満ちた道程の記録であり、多くの人々に影響を与え続けています。

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