鬼面山谷五郎

鬼面山 谷五郎の生涯と業績

鬼面山谷五郎は、1826年に美濃国鷲巣村で生まれました。本名は田中新一といいます。彼は地元の農家に育ち、若いころから力をつけるために石を運ぶ仕事に従事していました。その後、武隈部屋に入門し、相撲の道を歩むことになります。

初土俵から横綱へ

谷五郎は、1852年2月場所で「濱碇」と名乗って初めて土俵に上がりました。翌年には「弥高山」に改名し、1857年1月場所で新入幕を果たします。その際、彼は「鬼面山 谷五郎」と改名し、以後この名で親しまれました。この時期、彼は徳島藩の抱え力士として活躍し、同じく名を馳せた力士たちと共に「阿波の四天王」として知られました。

しかし、彼の相撲人生は順調ばかりではありませんでした。1867年の対陣幕久五郎戦では、何十年も続いた因縁があったために特に注目され、この試合は「遺恨試合」とまで呼ばれることとなりました。また、1865年の11月場所では、両國梶之助との取組で仕切り直しが2時間にも及び、結果的には引き分けとなりました。この試合は「仕切り返し」と称され、相撲界における大一番の一つとして記憶されています。

横綱免許の授与

1869年に、彼は吉田司家から明治時代初となる横綱免許を授与されました。しかし、当時彼はすでに43歳で、歴代の横綱の中で最高齢での横綱資格取得となりました。このため、彼が横綱として土俵に立てる期間は短く、1870年11月場所限りで現役を引退することとなります。

引退後には一代年寄として「鬼面山 谷五郎」の称号が与えられましたが、わずか1年後の1871年9月7日に46歳で亡くなりました。彼の墓は埼玉県狭山市の徳林寺にあり、故郷の養老町には生誕地を示す碑が建立されています。

人柄とエピソード

谷五郎は、温和な性格で、古武士のような風貌が特徴的であり、多くの人々に慕われていました。彼は「敗戦を恐れて仕掛けないのは自然の理ではない」と考えており、負けを気にせず「勝負は時の運」と大らかに捉えていました。このため、幾度となく取り逃す場面もありましたが、彼の信念は揺らぐことなかったのです。

また、彼は私生活では酒を飲まず、女性を近寄らせないという厳格さがありましたが、既婚者であったことが記録されています。稽古が終わると、アサリを買って相撲仲間と共にちゃんこを作ることを楽しんでいました。

土俵入りの姿

谷五郎は土俵入りの際、綱を締めた姿で両手を広げ、太刀持ちも従えるという形を取っていました。これは現在の不知火型の祖形とされ、彼の土俵入りは力士たちに影響を与え続けています。彼自身のスタイルは、後の横綱たちにとっても一つの模範となりました。

成績と名声

鬼面山谷五郎は、通算成績で143勝24敗という驚異的な数字を残し、27場所にわたる幕内在位を誇っています。彼は優勝相当成績を7回達成し、横綱としての名声を確立しました。これらの功績によって、彼は現在でも多くの相撲ファンに支持され続けています。

その生涯を通じて、鬼面山谷五郎は相撲の世界に多大な影響を与えた力士として、歴史に名を刻んでいます。

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