増山正同

増山正同：幕臣から藩主へ、そして子爵へ

増山正同は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した人物です。伊勢国長島藩の第8代にして最後の藩主として知られ、明治維新後には子爵に叙せられました。彼の一代記は、激動の時代を生き抜いた一人の大名の物語として、多くの興味深い側面を私たちに提示してくれます。

生い立ちと幕臣としての経歴

天保14年（1843年）、増山正同は幕臣・永井直方の次男として誕生しました。幼名は勇之助、隼人、大学と複数の名前で呼ばれていました。 彼は500石取りの幕臣の身分から出発し、西丸目付という重要な役職にも就いています。その後、嘉永5年（1852年）には長島藩増山家分家の家督を相続し、小普請組に編入されました。文久元年（1861年）には御書院番士、慶応2年（1866年）には御使番に任命されるなど、着実に幕府内での地位を築いていきました。これらの役職は、幕府における重要な地位であり、彼の能力の高さを物語っています。慶応2年から明治維新にかけては御使番を務め、重要な役割を担っていたと考えられます。

長島藩主への就任と明治維新後

明治2年（1869年）、第7代長島藩主・増山正修の嫡男が廃嫡されたことを受け、正同は正修の養子となりました。そして、正修の死去に伴い、長島藩の藩主を継承しました。同年6月24日には版籍奉還により知藩事となり、藩政を担うことになります。しかし、明治4年（1871年）7月15日の廃藩置県により、藩主の地位を失いました。廃藩置県は、明治政府による大きな制度改革であり、正同は時代の流れに翻弄されることになります。

廃藩置県後、正同は東京に移住し、明治9年（1876年）には宮中祀候、後に侍従に任じられました。これは、明治政府において重要な地位であり、彼の幕府時代の経験や人脈が評価された証と言えるでしょう。そして、明治17年（1884年）には華族令により子爵に叙爵され、華族として新たな人生を歩み始めます。叙爵は、明治政府による社会構造の改革の一環として行われ、正同は新たな身分を得ることになりました。

正同の死と系譜

明治20年（1887年）4月22日、正同は45歳という若さでこの世を去りました。彼の生涯は、幕臣から藩主、そして華族へと変遷する激動の時代を生き抜いた、まさに波乱万丈なものでした。

正同の実父については、長らく大和新庄藩主・永井直方とされてきましたが、その没年と正同の生年が一致しないこと、そして直方の幼名や通称に「三左衛門」がないことなどから、この説は誤りとされています。東京大学史料編纂所所蔵の「華族明細短冊」には、正同の実父は「永井大江直方（三左衛門）」と記されており、新庄藩主とは別人であることが明らかになっています。

正同の養父は増山正修であり、妻は水野忠啓の娘である水野喜美子です。また、養子に増山正治を迎えています。これらの家族関係は、彼の生涯を理解する上で重要な要素となっています。

参考文献

増山正同の生涯を知る上で重要な文献として、「伊勢長島増山家譜」、「江戸幕臣人名事典」、「華族明細短冊」、「駿遠へ移住した幕臣たち」、「長島町誌」などが挙げられます。これらの文献は、正同の系譜、幕臣時代の活動、藩主としての役割、そして明治時代以降の生活など、様々な側面から彼の生涯を解き明かしてくれる貴重な資料です。これらの文献を詳細に調査することで、より深く増山正同の人生を理解することができるでしょう。

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