増支部

増支部（ぞうしぶ）とは

増支部は、仏教の重要なパーリ語経典の一部であり、五部構成の中で第4の部に位置づけられています。正式名称は「Aṅguttara Nikāya」（アングッタラ・ニカーヤ）で、数に基づいてまとめられた短編経典集です。この集は、仏教の様々な概念を紹介するために、それぞれの数（法数）ごとに整理されており、そのために「増支」と呼ばれています。

法数に基づく構成

増支部では、仏教の基本的な考え方を数字に基づいて整理します。たとえば、三界、四諦、五蘊、六道、八正道など、特定の数に関連する概念に焦点を当て、それに基づいて短い経典が作成されます。このようにして、数の集まりを意味する「支（aṅga）」が集まることで構成され、「aṅga（支）-uttara（上昇）」という組み合わせが生まれ、「増支部」として知られています。

漢訳『増一阿含経』との関係

増支部は、漢訳の『阿含経』に位置づけられる『増一阿含経』と対応しています。しかし、ここでの違いは、増支部が数千におよぶ経典を要点をまとめた形式で提供するのに対し、漢訳の『増一阿含経』は物語を含むより長い経典で構成されています。結果的に、現在ではこの二者の対応関係はほとんど失われてきています。『増一阿含経』の原題「Ekottarika-āgama」という語も、「一つずつ増える」という意味から来ており、同様に「増」と訳されています。

増支部の詳細な構成

増支部は、11の集に分かれており、それぞれの集が異なる数の経典を持っています。以下はその詳細です：

1. 一集（Ekaka-nipāta）: 20 の「品」（vagga）を含む611の経。
2. 二集（Duka-nipāta）: 15の「品」と4つの「略品」を含む246の経。
3. 三集（Tika-nipāta）: 16の「品」と2つの「略品」を含む184の経。
4. 四集（Catukka-nipāta）: 27の「品」と1つの「略品」を含む783の経。
5. 五集（Pañcaka-nipāta）: 26の「品」と3つの「略品」を含む1151の経。
6. 六集（Chakka-nipāta）: 12の「品」と1つの「略品」を含む649の経。
7. 七集（Sattaka-nipāta）: 10の「品」と1つの「略品」を含む1132の経。
8. 八集（Aṭṭhakādi-nipāta）: 10の「品」と1つの「略品」を含む626の経。
9. 九集（Navaka-nipāta）: 9の「品」と1つの「略品」を含む432の経。
10. 十集（Dasaka-nipāta）: 22の「品」と1つの「略品」を含む746の経。
11. 十一集（Ekādasaka-nipāta）: 3つの「品」と1つの「略品」を含む671の経。

このように、増支部は様々な数に基づく教えをまとめた経典であり、仏教の教義を理解するための重要な資料となっています。

日本語訳と参考文献

日本語訳としては、例えば『南伝大蔵経・経蔵・増支部経典1-7』や、監修中の『原始仏典III 増支部経典』が存在します。これらは、仏教の教えをより深く理解するための貴重なリソースとなっています。

参考リンク

増支部や西方の教えに興味がある方には、パーリ語の原文を読むこともできるオンラインリソースがいくつか存在します。SuttacentralやAccess to Insightなどのサイトでは、様々な言語に訳された仏教の経典を読むことが可能です。

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